病院より「静かな場所」で回復する――ハーレム発、高齢者急性ケアの新モデル
リハビリ施設内の急性医療ユニットが示す、超高齢社会への処方箋
ハーレム南部にあるスパールネ・ガストハウス病院の救急外来に運ばれてきた81歳の男性は、脱水症状のため点滴が必要と診断された。だが医師たちは彼の腕に針を刺さなかった。それどころか、本人の同意を得たうえで、担架に乗せたまま病院の外へと送り出した。向かった先は、わずか500メートル先にあるリハビリ施設「ヤコブクリニック」。そこで男性は広い窓と専用バスルームを備えた個室に入り、1日2リットルの点滴を受けた。「ホテルの小部屋、と言っていいくらいだ」と、ベッドの縁に腰掛けた男性は満足そうに話す。
「騒がしい病院」を避けた回復の場
この取り組みの正式名称はAMU(急性医療ユニット)。スパールネ・ガストハウスとヤコブクリニックが2024年11月から試験運用を開始した。尿路感染症、脱水、肺炎、息切れなど比較的シンプルに対処できる急性症状を持つ高齢患者を対象とし、病院ではなくリハビリ施設の6床の個室で治療するモデルだ。救急外来で状態が安定していると判断された患者に限り、病院の内科医とヤコブクリニックの高齢者医療専門医が電話で協議し、転送の可否を決める。
なぜリハビリ施設なのか。高齢者医療専門医のチョンメ・デ・フラース医師は、高齢患者が「認知機能がすでに低下していることが多く、そこへさらに慣れない騒がしい環境に置かれる」ことの弊害を指摘する。複数の患者が同室で、昼夜を問わず看護師が出入りする病院環境は、高齢者にとって過剰な刺激となりやすい。一方、ヤコブクリニックの廊下は静かで、個室の壁は(ある訪問者が「もう少し飾りがあってもいい」と苦笑するほど)シンプルだ。それが回復には好ましい。
200例以上のデータが示す効果
200例以上の入院を経た内部評価では、患者満足度は10点満点中8.3点、スタッフ満足度も8点を記録した。平均在院日数はおよそ6日で、退院後は通常のリハビリ病床か自宅へ移る。病院の病床と比べてコストが低い点も見逃せない。専門的な設備や検査体制を備える病院のベッドは、その構造上どうしても高コストになるためだ。
内科医のナネット・ハイゼンハ氏は、老年科から神経内科、循環器科に至るまで「病棟は常に満床に近い状態」だと語る。高齢化と医療人材不足が重なるなか、AMUは病院にとって複雑な処置が必要な患者のためにベッドを空ける手段にもなっている。6床という規模は小さく見えるが、回転が速いため実質的な余力は侮れない。
在蘭日本人にも無縁ではない問いかけ
両施設は実験を恒久的な政策として継続する方針を固めており、全国の病院や医療保険会社も動向を注視している。この取り組みが示すのは、急性ケアの「場所」そのものを問い直すという発想の転換だ。オランダ全土で進む高齢化と医療ひっ迫のなかで、同様のモデルが各地に広がる可能性は十分ある。
在蘭の日本人にとっても、自身や家族が救急外来を経由してリハビリ施設へ転送されるケースが今後増えうる。「なぜ病院に入院しないのか」と戸惑う前に、このような選択肢が存在すること、そしてそれが患者にとってむしろ好ましい環境である場合があることを知っておくことは、いざというときの安心につながるだろう。
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情報源: NRC



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