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フェスのタイムテーブルは「政治」だ――ローランズが明かす舞台裏の権力争い
社会 読了 3分

フェスのタイムテーブルは「政治」だ――ローランズが明かす舞台裏の権力争い

アーティスト、エージェント、プログラマーが交わす見えない交渉の全貌

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毎年8月末、オランダの音楽ファンは二つの大型フェスティバルに沸く。ビッディングハウゼン近郊の干拓地で開かれる「Lowlands」と、フリーラント島を舞台にした「Into The Great Wide Open(ITGWO)」だ。来場者がスマートフォンで眺めるタイムテーブルは、一見シンプルな時間割に見える。しかしその裏では、数十人のプログラマー、アーティスト、エージェントが何カ月もかけて繰り広げる静かな権力闘争がある。

「空のパズル」から始まる長い交渉

UTRECHTのライブハウス「Ekko」のプログラマーも兼任するITGWOのDirk Baart(28)は、タイムテーブル編成を「空のパズル」と表現する。まず高度なExcelファイルに空白の枠を並べ、そこに80〜100のブロックを月単位で埋めていく作業だ。「最初に埋まる枠もあれば、何週間も空いたままの枠もある。最良のアイデアが見つかるまで妥協はしない」と語る。

Lowlandsを主催するMojoのブッカー、Maurice Spijker(55)は週次のアーティスト選考会議を「ほとんど有機的なプロセス」と形容する。枠の決定は最大1年半前から始まることもあり、バンドがヨーロッパのサマーツアーを発表した段階でエージェントへの交渉が動き出す。出演が決まると次は「どのステージか」「誰の前後に出るか」「誰と出演時間がぶつかるか(クラッシュ)」といった要求が矢継ぎ早に来る。

枠の「位置」が持つ経済的・政治的意味

プログラマー両者が口をそろえるのは、「タイムテーブルは人気順のランキングではない」という点だ。メインステージのトリを飾れる規模のアーティストでも、プログラム全体の流れとしては別の時間帯・別のテントがふさわしいと判断されることがある。今年のLowlandsでは、ポップシンガーのS10が昼間の大型「Alpha」ホールに、アートポップの旗手Eefje de Visserが夜の「Bravo」テントに配置された。

しかしエージェント側にとって、出演枠の位置は宣伝資料や次のブッキング交渉に直結する「売り物」でもある。Spijkerは「名前が大きいほど、billing上の高い位置を求めてくる」と明かす。交渉の場では「クローザー(最終アクト)でないなら出ない」という言葉も飛び交うという。

今年の事例が象徴的だ。若手米国人アーティストのSombrは人気急上昇中で、楽曲「Undressed」はSpotifyで10億ストリームを超え、ヘッドライナー格への昇格を求める声もあった。だが最終的には「前から2番目」に留まり、クローザーはよりカルト的な支持を持つTyler, The Creatorが務める。一方、オランダのラップデュオ「IJsland」はブッキング後の1年で最重要アクトの一つに急成長した結果、Spijker自身が「今なら選ばなかった」と認める午後5時のBravoの枠に収まることになった。先約の時間帯はもう空いていない。

小さなフェスが示す、もうひとつの哲学

最大6,000人というフリーラント島の収容限界の中で開かれるITGWOには、そもそも「ヘッドライナー」という概念が存在しない。「5〜6人の大きな名前が年間のアンカーとして雲のように上に浮かぶイメージ」とBaartは説明する。金曜はCharlotte Adigéry & Bolis PupulとIJslandが二頭立て、土曜はMaroとThe Whitest Boy Aliveが組む。「誰が一番大きいかではなく、その瞬間にどんなエネルギーをもたらすか、集団的体験をどう高めるか」が問いになる。

さらにこのフェスには独特の制約がある。会場の砂丘に生息するサンドトカゲが産卵するかどうかで、ステージ使用の可否が春まで確定しない。エコロジーが交渉テーブルに割り込む形だ。在蘭日本人がLowlandsのアプリを開いてタイムテーブルを確認するとき、その小さなブロックひとつひとつに、こうした長い交渉の積み重ねと見えない政治が詰まっている。

情報源: NRC

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