「スーパーマンとイエスの合体」ではなかった――水泳チャリティーの英雄、初の途中棄権
白血病を乗り越えた五輪金メダリストが見せた「人間らしさ」の意味
白血病を克服し、2008年北京オリンピックの10キロ遠泳で金メダルを手にしたマールテン・ファン・デル・ワイデン(45)。オランダで最も知られるアスリートの一人である彼が、自ら「史上最大のスイム」と銘打ったチャリティー水泳への挑戦を、吐き気と腹痛のため断念した。ブラバント州を中心とした22都市をめぐるルートという前例のない規模の挑戦だっただけに、初の「途中棄権」はオランダ国内で大きな反響を呼んでいる。
「奇跡の人」が積み上げてきた挑戦の歴史
ファン・デル・ワイデンのキャリアは、NRCのコラムニストが「逆向きのおとぎ話」と評するほど独特の軌跡を描いている。白血病から生還し、五輪金メダルという最高の輝きを放った後、彼の挑戦はより極端で、より個人的な方向へと向かっていった。11都市を結ぶエルフステデントフトを単独で泳ぎ切り、高齢の視聴者も含め国民がテレビに釘付けになった。さらに32時間かけてドーバー海峡を横断し、自ら考案した「エルフステデントライアスロン」も完遂した。どれほど無謀に見える挑戦でも、彼がやると言えば誰もが信じた。コラムニストは「大西洋を背泳ぎで渡ると言われても信じただろう」と書いている。
英雄の「神話化」と今回の棄権が示すもの
しかしそうした挑戦が積み重なるにつれ、ある変化が起きていた。単独の泳者という孤高のイメージは薄れ、周囲のメディアチームは肥大化し、水中でのインタビューすら行われるようになった。コラムニストは皮肉を込めて「多くのおしゃべりのせいで水を飲み込んだのかもしれない」と指摘する。今回の挑戦についても、ファン・デル・ワイデン自身が事前に「自己克服プロジェクトの美しい締めくくり」と語っていただけに、棄権という結末は本人にとって相当な打撃だったとみられる。
一方で、小児がん支援施設「プリンセス・マキシマセンター」への寄付窓口は引き続き開かれており、チャリティーとしての活動は影響を受けていない。棄権の知らせが広まると、女優でインフルエンサーのニコレット・ファン・ダムがすぐさまInstagramで「愛しくて強いマールテン、今は自分自身のことを考えて」と投稿した。コラムニストはこれを「インフルエンサー全員の目にある棘」と鋭く評した――自己発信を生業とする人間が、他者の自己中心的な行動をいたわるという構図への批判だ。
在蘭日本人にとっての視点
ファン・デル・ワイデンの物語は、オランダにおける「チャリティーと英雄崇拝」の関係を映し出している。善意の寄付活動がアスリートの個人ブランドと不可分に結びつき、メディアがそれを増幅させていく構造は、オランダに限らず多くの社会に共通する現象だ。今回の棄権は、「人間である」ことを再確認させる出来事として、批評的な目で見れば清々しくもある。チャリティーへの寄付はこれからでも受け付けられており、プリンセス・マキシマセンターへの支援を考えている在蘭の方にとっては、むしろ改めて注目する機会といえるかもしれない。
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情報源: NRC



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