オゼンピック報道で罰金、オランダ主要紙が「報道の自由の侵害」と猛反発
医療監察局の制裁が問いかける、医薬品規制とジャーナリズムの境界線
オランダの医療・青少年監察局(IGJ)が、NRC、フォルクスクラント、テレフラーフ、ADなど国内主要紙複数に対し、糖尿病・肥満治療薬のオゼンピック(Ozempic)、ウェゴビー(Wegovy)、マウンジャロ(Mounjaro)に関する報道を理由として数万〜十数万ユーロの罰金を科した。IGJは、各紙の記事が医薬品を過度に肯定的に紹介し、「宣伝」にあたると判断。処方箋が必要な医薬品の一般向け広告を禁じる医薬品法に違反するとしている。メディア各社やジャーナリスト組合はこの処分を「報道の自由への侵害」として一斉に反発しており、規制当局とメディアの間に深刻な対立が生じている。
何が「広告」とみなされたのか
IGJによれば、問題とされた記事の多くは、オゼンピックなどの薬剤がオランダで承認されている糖尿病治療以外にも健康上のメリットをもたらす可能性があると報じたものだ。IGJの広報担当者は「記事が非常に宣伝的かどうか、読んだ後に『この薬を買いたい、使いたい』という気持ちになるかどうかを判断基準にしている」と説明する。罰金は内容・文脈・画像・音声を総合的に評価した結果だという。
DPGメディア(フォルクスクラント・ADの親会社)は4月に地方紙デ・ステントールと女性誌フレアの記事で4万8500ユーロの罰金を受けた後、今月さらにフォルクスクラントとADの記事で5万1000ユーロの追加処分を受けた。一方、NRCとテレフラーフを傘下に持つMediahuisへの罰金は当初66万ユーロと算出されたが、言論の自由を制限しすぎるとして最終的に13万2000ユーロへと大幅に減額された。NRCの場合、問題とされたのは製薬会社による安全な肥満治療薬の開発やオゼンピックの健康効果に関する科学的研究を取り上げた科学部の記事だった。
「自己検閲を招く」——各紙編集長が一斉に抗議
各紙の編集長とジャーナリスト組合(NVJ)は今回の処分に強く反発している。NVJのトーマス・ブルーニング事務局長は「評判ある主要メディアと誠実なジャーナリストに高額の罰金を科すことに衝撃を受けている。彼らは公衆への情報提供以外の意図を持たずに医薬品報道を行っている」と批判した。フォルクスクラントのピーター・クロック編集長も「医薬品法は報道には適用されるべきではない。少なくとも、記事が金銭の対価として書かれたと立証されない限りは」と述べ、すでに問題とされた記事の一本をウェブサイトから削除したことを明らかにした。
NRCの副編集長ルーカス・ブラウワースは処分を「奇妙だ」と一蹴。「対象となった記事は、副作用にも言及し、科学的研究を参照した慎重なジャーナリズムの好例だ」と主張し、記事の修正・削除は行わない方針を示した。最も強い警告を発したのはテレフラーフのカムラン・ウッラー編集長だ。「ジャーナリストは今後、報道に萎縮するだろう。大手メディアは罰金を支払えるかもしれないが、13万ユーロはジャーナリスト2人分の年収に相当する。罰金を払えば雇えるジャーナリストが減り、それ自体が報道の自由の制限になる」と指摘し、自己検閲(chilling effect)が中小メディアやフリーランスの記者に特に深刻な影響を与えると訴えた。
在蘭日本人にとっての意味
IGJ自身も、今回の罰金が表現の自由・報道の自由と緊張関係にあることは認めている。それでも同局は、公衆衛生の保護のために法律上これらの権利は制限できるという立場を取る。NVJと各紙編集長はIGJおよび保健省との協議を要求しており、今後の法的手続きの行方次第では医薬品報道をめぐる規制の解釈が大きく変わる可能性もある。オランダに暮らす日本人にとっても、医薬品や健康に関する信頼できるオランダ語メディアの報道が萎縮するとすれば、日常的な医療情報へのアクセスに影響しかねない。この問題は単なる報道の自由の議論にとどまらず、社会全体の医療リテラシーにも関わる問いを提起している。
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情報源: NRC



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