CRPS激痛から人生を取り戻した女性——切断という選択が開いた未来
パラリンピック金メダリストで獣医師、コリー・ホーマンの軌跡
手術室から半分だけ目を覚ましたコリー・ホーマンが最初に口にした言葉は、「取れた?」というものだった。母親が「そうよ」と答えると、彼女は「よかった」とつぶやいてすぐに眠りに落ちた。16歳の少女が、右の下腿を失ったことを「よかった」と感じた——その一言に、それまでの数年間がいかに苦しいものだったかが凝縮されている。
現在40歳のホーマンは、獣医師(軟部外科専門)として働き、車いすテニスのパラリンピック選手としてダブルスで金メダルを獲得した経歴を持つ。ヘルデルラントのフェルウェ地方にある茅葺き屋根の農家で、二人の子どもと暮らす。「あの切断がなければ、今の自分はなかった」と庭で犬たちを眺めながら語った。
「痛みを捏造している」と疑われた少女
事の始まりは2000年、彼女が12歳のとき。優先道路を自転車で走っていたところ、交差点で乗用車に衝突された。頭部を強打し、頚部捻挫(むち打ち)を負い、足首も挟まれた。病院では頭部の怪我が最優先で診られ、足は「骨折なし、打撲」とされた。しかし自宅療養中、頭部と頸部の症状が改善に向かう一方で、足だけが悪化の一途をたどった。
足は異常なほど腫れ上がり、皮膚の色が変わり、氷のように冷たくなった。「足から20センチ離したところに手をかざすだけで、冷気が伝わってくるほどだった」とホーマンは振り返る。下腿全体が極度に敏感になり、ハエが一匹止まっただけで激痛が走った。毛や爪の伸び方にも変化が現れ、痛みは足首から膝下10センチほどの部位まで広がった。
しかし当時、この症状を正しく理解できる医師はほとんどいなかった。理学療法やリハビリ施設での治療も効果がなく、ある医師は「母親の注目を集めるための仮病」と言い放った。学校では同級生が「嘘をついているかどうか確かめるため」と称して重いカバンを足に投げつけた。ホーマンは3週間、寝込んだ。疑念に耐えかねて自分で足に触れてみたこともある。「本当に激痛で、床に崩れ落ちそうになった」。信じ続けてくれたのは、両親だけだった。
切断という、最後の選択
毎晩の睡眠は断片的で、足に布団が触れないよう高さのあるベッドで足を外にはみ出させて横になる日々が続いた。夜の前半は読書やテレビで過ごし、後半は浅いうとうとだけ。翌朝は疲弊したまま、学校に向かった。複数の治療を試みても改善せず、マケドニアの民間療法師のもとへ父親と出かけたこともあったが、やはり一時的な効果に終わった。
「この痛みがなくならないなら、もう生きていなくていい」——そう感じるようになったとき、ホーマンは切断を決意した。自らを傷つけることは考えなかったが、「なぜまだ自分はここにいるのか」という問いが浮かぶようになっていた。
グローニンゲン大学医療センターのリハビリテーション医学教授、ヤン・ヘールトセン医師との出会いが転機となった。「私を診た医師の中で、初めて本当に私自身を見てくれた人だった。何が欲しいかを私に直接聞いてくれた」とホーマンは語る。数カ月に及ぶ検査と心理士との面談を経て、2003年初頭に切断手術が承認された。ただし、あるひとりの血管外科医は「生命の危機がないのに若い女性を傷つけることはできない」と手術を拒否。別の外科医がその役を引き受けた。
切断箇所をめぐっては、膝下ではなく「膝離断」が選ばれた。通常の膝下切断では、断端に新たなCRPS発症を誘発するリスクがあると医師が判断したためだ。膝の靱帯と腱を切断して大腿骨と下腿骨を分離する方法が採られた。
術後の回復と、残る課題
手術後の最大の懸念は、痛みが戻るか、幻肢痛が生じるかだった。グローニンゲン大学病院が40人以上の患者を対象に実施した長期研究では、切断後も12人に1人でCRPSが再発し、半数が幻肢痛を経験していることが示されている。
ホーマンのケースでは、元の激痛は術後に戻らなかった。ただし、強烈な幻肢のかゆみに悩まされた——本文によれば術後に「ものすごい幻肢感覚」が現れたという。それでも彼女が「切断は何より解放だった」と言い切るのは、あの夜々の苦しみを知っているからこそだろう。
オランダでは毎年数十人がCRPSと診断されるが、切断の対象となるのは年間わずか数人にとどまる。多くの場合、理学療法などで改善が見込まれるためだ。診療の標準化という面では、ガイドラインが整備されたのは2020年とごく最近のことであり、ホーマンが治療を受けていた2000年代初頭には、医師ごとに判断が大きく異なっていた。
在蘭日本人を含む外国籍の患者が難治性疼痛で医療機関を訪れた際にも、CRPSという診断名が念頭にあるかどうかで、治療の入り口が変わりうる。原因不明の持続的な四肢痛が外傷後に続く場合、専門医への早期紹介を求めることが、遠回りを防ぐ一歩になるかもしれない。
広告掲載にご興味のある方は こちら
情報源: NRC



/https://content.production.cdn.art19.com/images/de/fb/b2/ff/defbb2ff-96b9-4928-89f1-503260a977ac/6b1c9cd90165d2591c177611e81dc250999ae83b225b5821830005fd5a0176337d30ccc8839e4087f0e87faa6526da6afe150833f359d2c294c118054a204f64.jpeg)