カンタ誕生30周年――赤い小さな車が直面する「おしゃれ化」の波
障害者の足として親しまれた名車が、新規制のあおりを受ける
オランダの街角でよく目にする、あの小さな赤い車――「カンタ(Canta)」が今年で誕生から30周年を迎えた。障害を持つ人々の移動手段として長年にわたり社会に根づいてきたこのミニカーが今、思わぬ逆風にさらされている。
30年間、障害者の「足」として
カンタは1996年にオランダで生まれた障害者向けの小型車(ブロンモビール)だ。コンパクトなボディと取り回しの良さ、そして鮮やかな赤いカラーリングが特徴で、免許取得のハードルが低く設定されているため、高齢者や身体に障害を持つ人々が自立して移動するための手段として広く普及してきた。「自分の力で外出できる」という自由を何万人もの利用者に提供してきた存在であり、オランダの街並みに溶け込んだ一種の文化的アイコンでもある。
NRCの記者ピム・モレナールは実際にカンタに乗り込み、日常の交通事情を体験。その取材を通じて、利用者たちが現在直面している現実的な問題を掘り起こした。
「おしゃれ化」がもたらした規制の皺寄せ
近年、ブロンモビール市場に変化が起きている。イタリア発の小型電動車「Birò(ビロ)」をはじめとする、デザイン性の高いモデルが若い世代や都市部の住民の間で人気を集めるようになった。もともと福祉目的で設計されたカテゴリーに、いわゆる「ヤッピー層(yup)」が新たな移動手段として参入してきた形だ。
この流行に伴い、当局はブロンモビール全般に対する新たな交通規制を導入した。しかし、その規制は本来の主要ユーザーである障害者や高齢者にとって不都合な内容を含んでいた。新規制によって、カンタ利用者が走行できるルートや条件に制限が加わるケースが報告されており、「おしゃれ化」の恩恵を受けない層が不利益を被るという皮肉な構図が生じている。
在蘭日本人にとっての視点
オランダに暮らす日本人にとっても、ブロンモビールは身近な存在だ。高齢の家族と同居している場合や、自身が障害を抱えている場合、カンタのような小型福祉車両は生活の質に直結する選択肢となり得る。また、自転車大国オランダの交通事情をよく知る人であれば、ブロンモビールが自転車レーンを走ることもあるため、日々の通勤や買い物ルートへの影響も無視できない。
誕生30周年という節目に、カンタが提起するのは単なる乗り物の問題ではない。福祉目的で設計された制度やインフラが、市場のトレンド変化によって形骸化しないよう守ること――それはオランダ社会が引き続き向き合うべき課題といえる。
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情報源: NRC



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