5歳ムクちゃんを救いたい――「小児認知症」と闘う家族の100万ユーロの挑戦
アメリカ開発の治療薬に希望、しかし時間も資金も限られている
よく笑い、リズム感あふれる女の子――。オランダに住む5歳のムクちゃんは、一見すると元気な幼稚園児に映る。しかし彼女は、神経セロイドリポフスチン症(NCL)という極めて深刻な遺伝性疾患を抱えている。「小児認知症」とも呼ばれるこの病は、脳内に有害な物質が蓄積することで神経細胞が徐々に死滅し、子どもは運動機能や言語、視力を次々と失っていく。長命は望めない、とされる病だ。
母親が語る「未来を考えることの辛さ」
母親のナディンさんは、娘の将来をできるだけ考えないようにしていると打ち明ける。今この瞬間のムクちゃんの笑顔や歌声が愛おしいからこそ、これから訪れる変化を直視することが難しいのだという。NCLは現時点では根本的な治療法が確立されておらず、多くの子どもたちが学童期を迎える前後から急速に症状が進行していく。ムクちゃんの家族にとって、時間は決して味方ではない。
100万ユーロという壁、アメリカからの一筋の光
そんな家族に希望をもたらしたのが、アメリカで開発された治療薬の存在だ。この薬はNCL患者の症状進行を抑える可能性があるとされ、ムクちゃんの両親はその投与を強く望んでいる。しかし問題は費用だ。治療を受けるために必要な金額は100万ユーロ、日本円にして約1億5千万円にのぼる。オランダの公的医療保険ではカバーされないため、両親は自力で資金を集めるしかない状況に置かれている。現在、クラウドファンディングや寄付呼びかけなど、あらゆる手段を使って資金調達に奔走している。
在蘭日本人にとっても他人事ではない難病支援の現実
ムクちゃんのケースは、オランダを含む多くの国で希少疾患を抱える家族が直面する構造的な問題を浮き彫りにする。希少疾患の治療薬は開発コストが高く、公的保険の適用外となるケースが少なくない。そのため、患者家族が自ら巨額の費用を負担しなければならない現実がある。オランダでは近年、こうした「高額治療薬問題」について政府や医療機関の間でも議論が続いているが、個々の家族を救う仕組みはいまだ不十分だ。在蘭日本人コミュニティの中にも、難病を抱える子を持つ家族がいる可能性は否定できない。ムクちゃん家族の闘いは、医療制度の隙間に取り残された人々の声として、広く社会に届いてほしいと願わずにはいられない。
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