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オランダの切断手術、年3,500件——糖尿病が8割を占める現実と「前向き切断」という選択
社会 読了 2分

オランダの切断手術、年3,500件——糖尿病が8割を占める現実と「前向き切断」という選択

医師と患者が「共に決める」時代へ、変わりゆく切断医療の常識

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オランダでは毎年約3,500件の切断手術が行われている。大半は下肢、とりわけ下腿の一部だ。件数だけを見れば決して多くはないが、当事者にとってはその後の生活を一変させる重大な手術である。術後は長期にわたるリハビリが必要で、プロテーゼを使って歩行を再習得できるケースがある一方、車椅子生活を余儀なくされることも少なくない。グローニンゲン大学でリハビリ医学の名誉教授を務めたヤン・ヘールトセン氏の研究によれば、術後も半数以上の患者が何らかの痛みを抱え続けるという。

糖尿病が生む「気づかない傷」

切断手術の原因として一般的にイメージされやすいのはがんや交通事故だが、実際にはその割合は小さい。全体の95%以上は血管・神経の不可逆的な損傷によるものであり、なかでも糖尿病が8割を占める。慢性的な高血糖は血管と神経を徐々に蝕み、足の感覚を失わせる。靴の中の小石による傷にも気づかず、放置されたまま壊疽へと進行するケースが後を絶たない。

ヘールトセン氏は診察中に患者に靴を脱いでもらうことが多かったという。「足の裏に大きな傷ができているのに、患者本人はまったく気づいていない、ということがよくあった」と彼は語る。糖尿病患者にとって日常的な足の観察が重要なのはこのためだ。オランダには現在約120万人の糖尿病患者がいるとされており、医療の質向上によって切断手術の発生時期は遅らせられてきたものの、患者層の高齢化が進む中で「将来的に件数は増えると思う」とヘールトセン氏は懸念する。

「前向き切断」と共同決定の時代へ

切断手術はかつて、医師が「最後の手段」として極力避けようとする処置だった。ヘールトセン氏が医師キャリアの初期に経験したのは、壊死しかけた足で激痛に苦しむ患者が手術を「懇願」しなければならない光景だった。「手術が医師の失敗と見なされていたため、患者が頼み込むまで決断を先延ばしにしていた」と彼は振り返る。

現在の考え方は大きく変わっている。血管造影(アンジオグラム)によって下腿の血管状態を正確に把握できるようになったことで、「救えない足」かどうかの判断が早期から可能になった。その段階で手術に踏み切る「前向き切断(ポジティブ・アンピュテーション)」という考え方が広まりつつある。足が外見上は健康に見えても、血管損傷が修復不能であれば早期に切断することで、プロテーゼを装着して再び歩ける可能性が高まる。逆に引き延ばした結果、感染が骨にまで及んだ状態で緊急手術を行えば、プロテーゼの使用が困難になり車椅子生活になるリスクが上がるという。

こうした背景のもと、今日では医師と患者が対等な立場で治療方針を話し合う「共同決定」が標準化されつつある。ヘールトセン氏は患者団体「コルター・マール・クラフティフ(KorterMaarKrachtig)」を立ち上げるなど、医師主導から当事者主体へのシフトを長年推進してきた。「昔は医師が神様だったが、今はそうではない」と彼は言う。

在蘭日本人への示唆

糖尿病は日本人にとっても身近な疾患だ。在オランダ日本人コミュニティでも、食生活の変化や運動不足を背景に罹患する例は珍しくない。オランダの家庭医(ハイサーツ)制度のもとでは定期的な足のチェックが糖尿病ケアに含まれているが、言語の壁から医師との十分なコミュニケーションを取れないまま経過観察が遅れるリスクもある。「共同決定」の恩恵を受けるためにも、自身の症状や希望を積極的に伝える姿勢が求められる。足の小さな異変を見逃さないことが、将来の大きな選択を回避する第一歩となる。

情報源: NRC

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