フィリップモリスのAI世論工作、蘭広告審査機関が違反認定
EU規制強化の意見募集、オランダからの回答の約4分の3がAI生成と判明
たばこ大手フィリップモリスが人工知能(AI)を活用して展開した世論誘導キャンペーンについて、オランダの広告審査機関「Reclame Code Commissie(RCC)」は、タバコ広告禁止規定に違反するとの裁定を下した。一見すると市民参加を促すキャンペーンに見えながら、その実態はEUの規制強化を阻もうとする組織的な影響工作だったとして、医師グループがRCCに申し立てていた。
QRコードから始まるAI「代筆」の仕組み
フィリップモリスは、たばこ販売店に「your voice your choice」と書かれた黄色いポスターを掲示し、QRコードを添えた。コードをスキャンすると、タバコ製品や喫煙政策に関する選択式の質問に答えるページへ誘導される。回答をもとにAIが「私は規制強化に反対する」という趣旨の一人称の文章を自動生成し、そのままEUの公式意見募集サイトへ送信できる仕組みだ。NOS・Pointerの調査によって、EUの公的協議に寄せられたオランダからの回答の約4分の3がこのAIツールで生成されたものだったことが明らかになっている。
「市民参加の外皮をまとった商業広告」とRCCが断定
フィリップモリス側は「市民が公開討論に参加するための支援が目的」と主張した。しかしRCCはこれを退け、「公的協議への参加を呼びかける形式をとっていても、商業的性格は失われない」と判断した。さらに、このツールがvape(電子タバコ)や加熱式タバコなどの代替製品を有利に描写している点も問題視した。これらの表現そのものが広告に当たり、タバコ広告禁止規定に抵触するという結論だ。
医師グループの代理人を務めた弁護士ラウラ・ファン・ハイン氏は、タバコ広告禁止の違反は刑事罰の対象となると指摘したうえで、「デジタルによる影響工作も、市民参加という形に包んだとしても広告禁止の適用外にはならないという明確なシグナルだ。この先例はヨーロッパ各地の類似キャンペーンにも及ぶ」と意義を強調した。
15年ぶりの規制強化の行方
今回のキャンペーンの背景にあるのは、ブリュッセルで準備が進む15年ぶりとなる大規模なEUタバコ規制の改定だ。改定の焦点はvape、電子タバコ、加熱式タバコ、ニコチンパウチ(スヌース)といった代替製品で、フィリップモリスにとってはすでに売上全体の40%を占める主力分野にあたる。規制の行方は同社の事業の根幹に直結するだけに、今回の工作の動機は明白だ。
在蘭日本人にとっても、このニュースは他人事ではない。たばこ店でQRコードを見かけた際には、その背後にある仕組みを意識しておく価値があるだろう。また今回の裁定は、AIを介した組織的な意見誘導がいかに公的な民主的プロセスを歪めうるかを示す事例として、オランダ社会全体で議論が続きそうだ。
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情報源: NOS Algemeen



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