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ケメロット化学工業団地、エネルギー高騰とアジア競争の二重苦に直面
経済 読了 3分

ケメロット化学工業団地、エネルギー高騰とアジア競争の二重苦に直面

リンブルフ州の8,500人雇用拠点が問う「欧州産業の自律性」

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自転車、ヘルメット、キッチンキャビネット、防弾チョッキ——これらに共通するのは、リンブルフ州ヒーレンに広がる巨大化学工業団地「ケメロット」で生産された素材が使われているという事実だ。「脇を車で通り過ぎる人はパイプと冷却塔しか見えないが、この団地なしには自転車も自転車用ヘルメットも存在しない」と、同団地のディレクター、コース・ファン・ハーステレン氏は語る。しかしそのケメロットが今、存亡の岐路に立たされている。

エネルギー危機と「ドミノ倒し」のリスク

最大の打撃はエネルギーコストの急騰だ。ガス価格は2020年以降10倍以上に跳ね上がり、2022年のエネルギー危機時には記録的な水準を記録した。化学産業はガスを燃料としてだけでなく、肥料などの原料としても大量に使用しており、価格高騰の影響は直撃だった。サウジアラビア系のSabicとエジプト系のOCIは工場を売却せざるを得なくなり、化学メーカーのFibrantはアジア勢との競争に勝てず、敷地内7工場のうち3工場を閉鎖した。

アイントホーフェン工科大学化学部長のマルク・ボネスハンスヘル氏は「企業同士はチェーンの輪のようにつながっている。一社が倒れれば、連鎖的なドミノ倒しが起きる」と警鐘を鳴らす。オランダの電力網の過負荷も問題に拍車をかけている。ファン・ハーステレン氏は「将来はガスよりも電気を使いたいが、過負荷状態の送電網では不可能だ」と指摘し、インフラ整備なくしての脱炭素化には限界があると訴える。

欧州規制の緩和と「中国問題」

先週、欧州委員会はETS(排出量取引制度)の規制緩和を発表し、産業界に脱炭素化への猶予を与えた。ボネスハンスヘル氏はこの措置が「企業の持続的な脱炭素化を促す効果はある」と一定の評価をする一方、ファン・ハーステレン氏は「本当に救済策になるかはまだわからない」と慎重な姿勢を崩さない。

競合するアジア、特に中国では近年、化学工場が急速に増設され、ファン・ハーステレン氏いわく「不均衡な」排出量増加を招いている。同氏は「製品を欧州で持続可能な方法で作るのか、それとも生産方法が不明な別の大陸に委ねるのか」と問いかける。これに対し自然環境団体「ナチュール・エン・ミリュー」のディレクター、マルヨレイン・デマース氏は「中国も脱炭素で手を緩めていない。だからこそオランダで投資することが重要だ」と反論する。

安全保障上の重要拠点でもあるケメロット

ボネスハンスヘル氏が特に力を込めるのが、戦略的自律性の観点だ。ケメロットでは防弾チョッキに使用される高強度繊維が生産されており、「戦略的自律性の観点から言えば、この産業は国内に残すべきだ」と明言する。加えて、同団地には現在8,500人が雇用され、さらに数百人の学生が付属研究キャンパスで学んでいる。地域経済への影響も計り知れない。

一方で課題も残る。近隣住民からは化学物質の排出による健康被害への懸念が根強く、地域紙「デ・リンブルハー」は今年2月、周辺住民のがんリスクが従来の想定より高い可能性を報じた。ケメロット側と州当局はいずれも「排出量は計測値に基づき法的基準内に収まっている」と主張しているが、国立公衆衛生環境研究所(RIVM)が独立した健康影響調査を進めている。雇用・安全保障・環境・健康という複数の利益が交錯するなか、ケメロットをめぐる議論はオランダの産業政策の根幹を問うものとなっている。在蘭日本人にとっても、欧州の製造業基盤がどう維持されるかは、日常生活に直結するサプライチェーンの安定性という観点で無関係ではない。

情報源: NOS Algemeen

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