ライン川・マース川が7月に異例の低水位——気候変動が迫るオランダの水危機
例年9〜10月の水準が7月に出現、船舶・産業・観光に深刻な打撃
2026年7月、オランダに流れ込むライン川の水位が、観測史上まれな低さを示している。ドイツとの国境に近いロビット観測点では、例年9〜10月にようやく見られる水準が7月中旬の時点で既に記録されている。マース川でも同様の低水位が続いており、記録的な高温と乾燥が重なった今夏の深刻さが浮かび上がっている。
船舶・産業・観光への三重の打撃
水位の低下は、暮らしと経済に直結する問題を引き起こしている。内陸水運では、船底が川床に乗り上げるリスクが高まるため、積載量を大幅に減らさざるを得ない。工場や発電所にとっても、冷却水として使った温水を川に戻すことが制限される局面が増えており、生産性の低下につながっている。観光・マリーナ業への影響も顕著で、ロビット観測点のすぐそばに位置するヨットハーバー「デ・ベイラント」の責任者ティース・ファン・ウェイクは「この仕事を35年やっているが、7月にここまで低いのは初めてだ」と語った。喫水の浅いスピードボートは入港できても、通常のヨットでは座礁の危険があり、夏のピーク期であるにもかかわらず来訪者が激減しているという。
アルプスの「水の貯蔵庫」が機能しなくなっている
河川水利の専門家であるライクスワーテルスタット(国家水管理局)のダニエル・ファン・プッテンは「ライン川の流域全体で水が非常に少なく、アルプスの水位も極めて低い。その水がオランダまで届いていない」と説明する。問題の根は上流にある。アルプスの氷河と積雪は夏のライン川にとって最大の淡水供給源だが、今年は積雪の多くが春のうちに溶けてしまい、夏に使える”貯蔵”がほぼ失われた状態だ。デルタレスとライクスワーテルスタットで働く水文気象学者ヤン・フェルカーデは、スイスが自国利用のために水を確保している可能性にも言及し、「スイスからの流量が非常に少ない」と述べている。
今後数日の降雨については、両専門家とも改善効果を否定的に見ている。蒸発量を差し引いた「有効降雨量」がほぼゼロになる見通しで、このまま推移すれば1976年の記録的干ばつを超える可能性があるという。
「洪水か干ばつか」という両極化が進む未来
気候変動はこうした乾燥だけをもたらすわけではない。ちょうど5年前の2021年にはマース川が記録的な洪水を引き起こしたことも記憶に新しく、乾燥と氾濫という相反する極端気象が両方とも激しくなっているのが現状だ。長期的な河川インフラの再整備は研究・計画段階に止まっており、短期的な解決策はないとされる。フェルカーデは「CO₂排出量を削減しなければ、問題を大きくするだけだ」と警告する。
在蘭日本人にとっても、河川の低水位は身近な問題になりえる。デルタ地帯を抱えるオランダでは水は国土の根幹であり、内陸輸送コストの上昇は物価や産業サプライチェーンを通じて生活に影響を及ぼす。今夏の異例の事態は、気候変動が「将来の話」ではなくすでにこの国の日常を変えつつあることを、あらためて示している。
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情報源: NOS Algemeen



