「16強の壁」再び——アステカで散ったメキシコの夢、イングランドが3-2で8強へ
8大会連続ラウンド16敗退、開催国の悲劇と熱狂の記録
歴史的な重みをまとったアステカ競技場が、またしても開催国の悲劇の舞台となった。2026年W杯ラウンド16、メキシコ対イングランド。満員のスタンドを埋めた何万もの緑のシャツが見守る中、試合はPK2本、退場、そしてベンチを巻き込んだ乱闘と、息をつかせぬ展開を経て3-2でイングランドの勝利に終わった。メキシコは1994年大会以来、8大会連続でラウンド16敗退という記録をまた一つ積み重ねた。
40年ぶりの「因縁の地」
アステカでイングランドがプレーするのは実に40年ぶり。1986年メキシコ大会でマラドーナが「神の手」と伝説のドリブルゴールを決めた、あの準々決勝以来である。歴史的な文脈を知るファンにとって、この一戦は単なるラウンド16以上の意味を持っていた。
試合前のメキシコの熱狂はすさまじかった。メキシコ代表「エル・トリ」がグループステージ全勝・無失点で突破し、ラウンド16でもエクアドルを完封してきただけに、国民の期待はかつてないほど高まっていた。「Y si sí?(もしできたら?)」という言葉がタコス屋台から公園まで、メキシコシティの街中にあふれた。一方でその熱狂には悲しい影もあった。エクアドル戦後の歓喜の群衆が象徴的な目抜き通り「パセオ・デ・ラ・レフォルマ」に殺到し、圧死による死者4人が出るという悲劇があったばかり。当局は今回、1万7000人の警官を動員し、追加フェンスと大型スクリーンを増設して群衆の分散を図った。
劇的すぎた90分
試合は前半36分にジュード・ベリンガムのゴールで均衡が破れ、わずか2分後にベリンガムが再び決めて2-0とイングランドがリードを広げた。しかしアステカは沈黙しなかった。「シ・セ・プエデ(まだできる)」の大合唱の中、メキシコはすぐさまキニョーネスの混戦ゴールで2-1に詰め寄り、前半終了まで追加点を許さなかった。
後半、試合はさらに激化した。イングランドのDFクァンサーがメキシコのガヤルドに激しいタックルを見舞うと、ベンチの選手同士が小競り合いに発展。審判がVARを確認した末に赤カードを提示すると、スタンドは爆発的な歓声に包まれた。しかしその興奮が冷める間もなく、イングランド主将ハリー・カーンがPKを冷静に沈めて3-1。さらにメキシコもPKを獲得し、ラウル・ヒメネスが決めて3-2と再び1点差に迫ったが、守備に徹したイングランドのブロックを最後まで崩せなかった。
開催国の夢の終わりと、その先
この試合はメキシコにとって、自国での最後のW杯マッチでもあった。準々決勝以降の全試合は米国に移る。グループステージから続いた熱狂のホーム開催は、ここで幕を閉じた。NRCは「米国ではここまで強い文化的な盛り上がりは望めない」と指摘し、メキシコの雰囲気こそがこのW杯の最大の財産だったと評した。
イングランドは準々決勝でノルウェーと対戦する。2014年大会でアルイェン・ロッベンのPKに泣いたトラウマをはじめ、幾度も「あと一歩」で涙をのんできたメキシコ。国民的悲願だった8強の壁は今回も高かった。在蘭日本人の中にも、かつてのロッベンの「あのPK」を鮮明に記憶している人は少なくないだろう。違う形で同じ結末を迎えたこの夜のアステカは、サッカーの残酷さと美しさを同時に体現していた。
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情報源: NRC

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