オランダの秘匿制度がクシュナー関連アルバニア開発の出資者を隠す
40億ユーロのリゾート計画、アムステルダム経由で匿名の投資スキームが浮上
アルバニア南部の都市ヴロラ近郊に広がる保護ラグーン。フラミンゴが生息するその地を、総額40億ユーロ規模の高級リゾートに転換するプロジェクトが、アルバニア国内で大規模な汚職抗議運動の引き金となっている。このプロジェクトはドナルド・トランプ米大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏の投資会社と関連があるとされており、さらにアムステルダムに登記された法人を通じて約2年間保有されていたことが報じられた。オランダの企業登記制度が持つ構造的な抜け穴が、改めて国際的な注目を集めている。
「登録義務なし」が生む匿名の壁
書類上、このプロジェクトの名義人として登場するのは、アムステルダムを拠点とするニキータ・ヴィノグラドフ氏とゾヤ・ギュロワ氏の2名だ。両者は「Dutch Trust Management」という、外国資本の企業に対してオランダ人取締役と住所を提供するサービス会社を運営している。真の出資者はいかなる公開書類にも名前を現さない。オランダの登記制度では、25%を超える持分を保有する者のみ実名登録が義務付けられており、それを下回る出資者は匿名のまま保護される。バルカン調査報道ネットワークが追跡した所有連鎖によれば、アムステルダムの法人の一つは5名の無名のアルバニア人によって保有されているとみられる。ヴィノグラドフ氏はDutchNewsの取材に対し、信託事務所は実質的な所有者や資金の出所を確認する包括的な審査を行っており、土地が絡む案件では「強化版デュー・デリジェンス」を実施していると説明した。
租税条約と投資協定が生む「オランダ経由」の優位性
アムステルダムを拠点とするNGO「SOMO(多国籍企業研究センター)」の研究者ヴィンセント・キーゼブリンク氏は、25%ルールに加え、2022年の欧州司法裁判所判決によって実質的所有者の公開登録簿が閉鎖されたことで「このアルバニア案件の実質的所有者を追跡することは不可能になった」と指摘する。さらにオランダがアルバニアと締結している2004年の租税条約は投資利益への課税を軽減し、1994年の投資協定はアルバニアとの紛争を国内裁判所ではなく非公開の国際仲裁で解決することを可能にする。こうした条件がオランダと直接の関係を持たない外国投資家を引き付ける構造となっており、アムステルダム大学の研究者はオランダを「企業資金がタックスヘイブンへ流れる世界最大の導管国」と位置付けている。オランダ政府は2022年に信託事務所の全面禁止を検討したが、最終的には見送った。
抗議拡大のさなかに進んだ持分売却
アルバニア国内では、土地の所有権をめぐる未解決の訴訟があるにもかかわらずエディ・ラマ首相率いる政府がプロジェクトを承認したとして、市民が首相の辞任を求めて街頭に出ている。こうした動きはEU加盟交渉にも影を落としかねない。そして抗議運動が盛り上がりを見せた5月7日、オランダの親会社は全持分をカタール・フィナンシャル・センター(ドーハ)に登記された「サザン・デベロップメント・ホールディング」へ約30万6,000ユーロで売却したことが登記記録から判明した。米メディアはこのプロジェクトをクシュナー氏の投資会社とカタール人の富豪兄弟と結びつけて報じているが、登記記録の更新はまだ行われていない。在蘭日本人にとっても、オランダが国際的な資本の「通過点」として機能しうる現実は、企業活動や投資判断を行う際の法的・倫理的リスクとして念頭に置く価値があるだろう。
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情報源: DutchNews
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