外部からの富裕層購入者は地元スターターの脅威か――カダスターが住宅移動を分析
転居距離は10年で10.7kmから13.6kmへ拡大、「間接的な連鎖」が問題の核心
オランダの住宅市場では「外から来た富裕層が地元の若い初購入者(スターター)の住宅取得機会を奪っている」という声がたびたびあがる。こうした主張を実証的に検証しようと、オランダ登記所(カダスター)は2025年の転居データをもとにした調査報告を公表した。結論は単純ではなく、「直接的な脅威」ではなく「間接的な連鎖」こそが問題だという、やや複雑なものだ。
転居距離は10年で3キロ拡大
調査がまず示したのは、住宅購入者の移動距離が着実に伸びているという事実だ。平均転居距離は2015年の10.7kmから2025年には13.6kmへと拡大した。上昇の背景にはカダスターは住宅価格の高騰を挙げる。都市部で手が届かなくなった購入者が、より遠方の郊外や地方に目を向けるようになった結果だ。なお、コロナ禍の2020〜21年にはテレワーク普及を背景に平均距離が16kmに達したが、その後は緩やかに落ち着いてきている。
こうした遠距離移住の担い手として目立つのが、55〜75歳の年齢層だ。彼らはドレンテ州やゼーラント州など地方への移住を好む傾向があり、平均移動距離は21kmに及ぶ。また隣接市以外から転入してくる購入者の割合も、2015年の18.5%から2025年末には23.5%に増加しており、「外からの購入者」の存在感は着実に高まっている。
直接の競合ではなく、連鎖の問題
では、こうした外部購入者は地元スターターの直接の脅威となっているのか。カダスターの研究者たちは「必ずしもそうではない」と結論付ける。外部からの転入者——とくにランドスタット(北ホラント・南ホラント・ユトレヒト)から移り住む購入者——は、多くの場合、既存住宅の含み益(オーバーワールデ)を活かしてより高額な物件を狙う。一方、地元スターターが手を伸ばすのは相対的に安価な価格帯であり、両者が文字どおり同じ物件を奪い合う場面は限られる。
問題はその先にある。外部購入者が地元の「乗り換え層(ドアストローマー)」と同じ市場で競合し、地元のドアストローマーを他市へ押し出してしまうのだ。そうなると、地元スターターは地元ドアストローマーが手放す物件を待ち続けることになる。カダスターの報告書はこの構造を端的に表現している——「問題は外部購入者がどんな物件を買うかだけでなく、もし地元のドアストローマーがその物件を買っていたら、どのような流通の連鎖が生まれていたかにある」。
価格差が際立つフェルウェ地域
地域別にみると、ランドスタットの隣接市での外部購入者の存在感は際立っている。2025年、ヘルダーラント州のキュレンボルフでは購入者の42%がランドスタット出身で、うち18%はユトレヒト市からの転入だった。アルメーレ(38%)、ナイケルク(35%)、スヘルペンゼール(33%)でも同様の傾向が確認された。
価格差という観点では、フェルウェ地域の数字が特に目を引く。プッテン(ヘルダーラント州)では、外部からの購入者が地元購入者より平均22万5,000ユーロ高い物件を購入しており、エーペ、ニュンスペート、エルメローでも外部購入者の支出は地元住民を10万ユーロ以上上回った。逆に、ブルーメンダールやフーア・アムステルなどランドスタット内の高級住宅地では、新規転入者のほうが既存住民より10万ユーロ以上安い物件を購入する傾向もみられ、流れは一方通行ではない。
在蘭日本人にとって、特に都市部から地方への移住を検討している場合、こうした構造は他人事ではない。ランドスタットの含み益を活かして郊外に移る動きは、まさに外部購入者の典型例にあたる。住宅価格の高騰が続くなか、地元の購入者が不利な立場に置かれやすい市場の連鎖をカダスターのデータは可視化している。
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情報源: NRC
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