ホルムズ海峡封鎖から3か月——オランダのガソリン価格に起きていること
最悪シナリオはなぜ現実化しないのか、石油市場の「謎」を読み解く
米国とイランの間で戦闘が始まってから、すでに3か月以上が経過した。開戦当初、世界のエネルギー市場には強い緊張が走り、「ホルムズ海峡が封鎖されれば原油供給が激変する」という最悪シナリオが広く語られた。ところが現時点では、その最も深刻な予測はまだ現実のものとなっていない。なぜなのか——NRCの経済ポッドキャストが、この「謎」を正面から取り上げている。
ガソリン価格はなぜ「謎」なのか
ポッドキャストの中でジャーナリストのマールテンが指摘するのが、オランダ国内のガソリン価格の動向だ。ホルムズ海峡封鎖という地政学的ショックがあったにもかかわらず、オランダのポンプ価格は必ずしも単純な上昇曲線を描いてきたわけではない。原油の国際価格と国内の小売価格の間には、精製コスト・輸送費・為替・税制といった複数の層が存在し、それぞれが独自のタイムラグと変動要因を持つ。原油価格が下がっても、ガソリン価格の下落は遅れて届くという非対称性は以前から知られているが、今回の危機はその構造を改めて可視化した。また、石油取引が「リットル」ではなく「バレル(約159リットル)」という単位で行われる歴史的・慣習的背景も、価格の見えにくさに拍車をかけている。
「アヒルのおもちゃ理論」と財政の恩恵
もう一人の担当者マリケが持ち出すのが、いわゆる「バスタブのアヒル理論」だ。石油を水に、タンカーを巨大なアヒルのおもちゃに見立てるこの比喩は、供給ルートが変化したとき、市場全体でどのように在庫と価格が再調整されるかを直感的に説明するものだ。ホルムズ海峡が封鎖されても、世界の石油は完全に止まるわけではなく、タンカーはアフリカ南端の喜望峰迂回ルートなどへ動線を変える。迂回ルートは輸送コストと所要日数を大幅に増加させるが、それが直ちに「供給ゼロ」を意味するわけではない——というのがこの危機で確認された重要な点だ。
さらに番組が問いかけるのが、オランダ政府の財政への影響だ。オランダでは、ガソリン価格に占める税・賦課金の割合が非常に高い。価格が高止まりする局面では、政府の税収が膨らむ構図がある。危機の「受益者」として政府が俎上に載せられるのは、在蘭の消費者・ドライバーにとっても他人事ではない論点だ。
海峡が再開通したとき、欧州は何が変わるか
VOX-EU/CEPRの分析も参照しながら番組が論じるのが、海峡が将来的に再開通した場合のシナリオだ。中東産の原油と液化天然ガス(LNG)が再び大量に市場に流入すれば、欧州のエネルギー価格は短期間で急落する可能性がある。それはインフレ沈静化という追い風になる一方、エネルギー転換投資の経済的合理性に影響を与えるという複雑な側面も持つ。在蘭日本人にとっても、光熱費・交通費・物価全般に関わるテーマとして、この危機の「出口」は引き続き注目に値する。
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情報源: NRC
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