オランダ、10人に1人が病欠——メンタル不調が急増する労働市場の危機
雇用主が2年間給与を負担する制度が、かえって休職を長引かせる?
オランダで病欠者数が深刻な水準に達している。労働人口のおよそ10人に1人が、病気を理由に働くことができない状態にある。なかでも近年急増しているのが、メンタルヘルスの不調による休職だ。身体的な疾患に比べて回復に時間がかかるため、職場への復帰が長期にわたって困難になるケースが多い。個人の苦しみにとどまらず、社会全体が抱えるこの問題は、静かに、しかし確実に拡大している。
メンタル不調が「最も長い離脱」を生む
精神的な理由による休職が特に問題視されるのは、その期間の長さにある。うつや燃え尽き症候群(バーンアウト)といった状態は、骨折や感染症と異なり、回復の見通しが立てにくい。NRCのポッドキャスト「Zo simpel is het niet」では、「De Argumentenfabriek」の創設者兼ディレクターであるキース・クラーイェフェルトが出演し、メンタル不調による休職者の増加が、オランダ経済と社会にとって最も深刻な課題の一つになっていると指摘した。
すでにオランダの労働市場は慢性的な人手不足にある。医療・教育・建設といった分野では恒常的に働き手が足りていない。そこに高齢化による退職者の増加が重なり、現役世代への負荷はさらに高まっている。病欠者が増えれば、残る労働者の負担が増し、それがまた次の燃え尽きを生む——そうした悪循環も懸念される。
「2年間の給与保障」制度は諸刃の剣か
注目すべきは、オランダ独自の制度的背景だ。オランダでは雇用主が、病欠した従業員に対して最長2年間にわたって給与を支払い続ける義務を負う。労働者保護の観点から設けられたこの制度は、一方で「休職を長引かせる誘因になっているのではないか」という議論も呼んでいる。
クラーイェフェルトは、こうした制度設計が企業の予防的投資を抑制している可能性を示唆する。病気になってから対処するよりも、そもそも職場環境を整えて不調を未然に防ぐほうが合理的であるにもかかわらず、コスト構造がその動機を弱めているというわけだ。企業が取り組める具体策として、柔軟な勤務形態の導入、管理職への心理的安全性教育、早期のサポート体制の整備などが挙げられている。
在蘭日本人にとっての視点
日本でもメンタルヘルスによる休職は社会問題となっているが、オランダの状況はその規模と制度的な複雑さにおいて一線を画す。在蘭日本人が現地の職場で働く場合、この「2年間の給与保障制度」は権利として知っておく価値がある。一方で、企業側のコスト意識が高まるなか、採用や雇用継続の判断に影響を及ぼす可能性も否定できない。
オランダ政府や専門家の間では、予防重視の職場政策へと軸足を移す必要があるという声が高まっている。制度の見直しと職場文化の変革——この二つが同時に求められている局面だ。
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情報源: NRC
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