オランダ人が貯蓄にこだわり投資しない理由
6,000億ユーロが銀行口座に眠る「貯蓄大国」の実態
オランダは「貯蓄大国」だ。コロナ禍や地政学的な不確実性が重なった近年、その傾向はさらに強まっている。オランダの家計が国内銀行に預ける残高は6,000億ユーロを超え、加えて海外の貯蓄口座にも160億ユーロが眠っている。海外口座は、わずかに高い金利を求めた選択の結果だ。一方、同じ時期に投資に回された資金は約2,000億ユーロ。かつて「4.5ユーロ貯蓄すれば1.5ユーロ投資」だった比率は、今や「6ユーロ貯蓄に対して2ユーロ投資」へと変化した。投資総額は6年前の1,500億ユーロから増えてはいるが、貯蓄との差は縮まっていない。
当局が異例の「投資促進」に乗り出した背景
こうした状況に対し、金融市場監督局(AFM)が動いた。「不必要なリスクを負うな」という注意喚起で知られる同局が、異例にも投資の積極的活用を呼びかけたのだ。AFMの調査によれば、約80万世帯(全体の10軒に1軒)が十分な資金的余裕を持ちながら投資をしておらず、このままでは老後に現在の生活水準を維持できなくなる可能性があるという。家計が投資をしない主な理由としてAFMが挙げるのは、知識の不足、リスクへの過剰な恐怖、そして「自分には無理だ」という自己不信の三つだ。さらに、Nibud(家計予算研究所)の基準では十分な資金バッファーがあると判定されるにもかかわらず、「お金が足りない」と答えた回答者も少なくなかった。
EUレベルでも問題意識は共有されている。2024年秋に公表されたドラギ報告書は、中国や米国との技術革新格差を埋めるために年間8,000億ユーロ規模の投資が必要だと指摘。欧州の家計に眠る貯蓄をいかに経済の血流へと変えるかが、大陸全体の課題となっている。
「損失が怖い」「タイミングが読めない」――市民の本音
ING銀行が今週発表したレポートも、同様の構図を浮かび上がらせた。「疑念、不確実性、そして損失への恐れ」がオランダ人を投資から遠ざけているという。具体的には、半数が「お金にリスクを負わせたくない」と回答し、4割が「投資家としての自信がない」と答えた。「買うタイミング・売るタイミングを間違えるのではないか」という不安も根強い。
NRCが実施した読者への事前アンケートにも、こうした心理がリアルに現れていた。ある読者は「トランプ政権の動向とAIバブルを見て、もうすぐ相場が大きく崩れると思い、相続した資金をあえて貯蓄口座に置いている」と語る。別の読者は長年投資を検討しながらも踏み出せず、「不確実性が苦手」と吐露した上でようやく始めたという。倫理的な投資の難しさに悩む声もあった。
INGは、こうした不安への処方箋として「少額から始め、毎月コツコツ積み立てる方法を選べば、タイミングを読む必要はない」と説明する。在蘭の日本人にとっても、年金制度の仕組みが日本と異なるオランダでは、老後の備えをどう作るかは切実なテーマだ。投資への一歩を踏み出すかどうか、その判断材料を冷静に整理しておくことが求められる。
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情報源: NRC
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