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ICC検察官のメール遮断が示したオランダの「デジタル主権」の危機感
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ICC検察官のメール遮断が示したオランダの「デジタル主権」の危機感

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📦 この記事は旧 HARRO LIFE(https://harrojp.com/articles/200525-3)からの移行アーカイブです。

マイクロソフトがメールを遮断

国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官Karim Khanのメールアカウントが、マイクロソフトによってブロックされた。背景には、イスラエルのNetanyahu首相らに対する逮捕状を発行したICCに対し、アメリカ政権が再び制裁を課したことがある。

この一件により、アメリカの政治判断がオランダの重要機関のITインフラに直接影響を与えるという現実が浮き彫りになり、国内では深刻な議論が巻き起こっている。オランダ紙『フォルクスクラント』は、この件が「米国IT依存のリスク」を改めて突きつけたと報じた。

米クラウドからの脱却を模索

オランダのクラウドサービス企業インターマックス(Intermax Group)のディレクター、Ludo Baauwによれば、少なくとも10の重要な公的機関がクラウド移行の見直しを相談してきているという。

「国家レベルの多くの機関が、今や“本当にこれでいいのか”と疑問を持ち始めている」

「だが、切り替えは簡単じゃない。移行には半年から3年はかかる」

一部の病院やインフラ機関では、マイクロソフト365に依存しすぎないよう国内にメールのバックアップを保存する動きも進められている。

「ホテル・カリフォルニア」状態

マイクロソフトの米国クラウドへの移行をギリギリで止められた省庁もあるが、すでに統合が進んでしまった機関は「逃れられない」状況にある。Baauw氏はその状態を「ホテル・カリフォルニアのようだ」と表現した。

「いつでもチェックアウトはできる。でも出ることはできない」

政府に染み込むマイクロソフト文化

オランダ政府では、マイクロソフト製品があまりにも当たり前になっている。たとえば、内務省が主導する行政業務近代化プロジェクト「Beter Samen Werken(より良い連携)」では、2023年にMicrosoft Teamsの使用を決定。その後の2.0版でも引き続きTeamsが使われることになった。

内務省は、「地政学的な気候の変化とデジタル自立の重要性」から方針の再評価を進めていると説明している。しかし、オープンソースを基盤とする「openBSW」プロジェクトですら、実際にはマイクロソフトの管理ソフトウェアに依存している。

ある関係者は「代替クラウドをマイクロソフト環境に接続するのは極めて難しい。職員もマイクロソフト製品しか知らず、それを基準に動くから結局またマイクロソフトに戻ってしまう」と語る。

専門家が指摘する「構造的依存」

欧州におけるテック政策の専門家Marietje Schaakeは、マイクロソフトが「政府のパートナーとしての地位を戦略的に築いてきた」と分析している。

オランダは伝統的にアメリカ志向が強く、民間企業に広い裁量を与えてきた。そして、マイクロソフトと政府の間には“回転ドア”の関係すらあると指摘。

マイクロソフトの欧州懐柔作戦

マイクロソフトは4月にヨーロッパ向けの信頼回復キャンペーンを展開。ソースコードをスイスに保管する案などを提示し、「欧州政府の不安に真摯に耳を傾けている」とアピールした。

だが、インターマックスのBaauw氏はその提案に冷ややかだー「それが顧客にとって何の意味がある? 現実の地政学的リスクは変わらない」

ソフトウェア専門家のBert Hubertも、マイクロソフトのICC対応を「約束と現実の矛盾」だと批判した。ー「つい先日、“こんなことは絶対に起きない”と公式に発言していたのに、結局起きたじゃないか」

参考

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