オランダの飲食店でチップ要求が急増――端末画面が変える「心付け」の文化
導入率上昇、平均4.31ユーロ――日本人客も無縁ではない「5%か、しないか」の選択
カード決済の端末画面に「5%・10%・15%、それともチップなし?」という選択肢が現れる――そんな場面がオランダの飲食店で急速に増えている。決済サービス大手のAdyenが公表したデータによると、バーやカフェにおけるチップ選択画面の導入率は、2025年前半の46%から2026年前半には53%へと上昇した。レストランでも19%から22%へと伸びており、「じわじわと業界標準になりつつある」とAdyenのベネルクス担当マネジャー、ジュリアン・マルリエ氏は語る。
「聞かれると払う」——数字が示す心理効果
チップ選択画面の最大の効果は、客に意思決定を促す点にある。決済・ソフトウェア会社Tebiのデータによれば、カウンター注文のコーヒーショップでは、チップを求めない場合はほぼ誰も端末でチップを追加しないが、選択画面を表示すると20%超の客が支払うという。チップ選択画面がある端末全体で見ると、61%が「なし」を選ぶ一方で、39%は実際にチップを払っており、その平均額は4.31ユーロだ。最も多く選ばれる選択肢は5%で、アメリカのように20%以上が当然とされる文化とは大きく異なる。Tebiのゼネラルマネジャー、フロリアン・ブルンスティング氏も「高額の”アメリカ式”チップはほとんど見られない」と述べている。
シェフェニンゲンのサーフスクール兼ビーチバー「The Shore」は、コロナ禍にキャッシュレス化した際にチップが激減したことを契機に、2021年からチップ選択機能を導入した。共同オーナーのトーマス・フランセ氏は「最初は否定的な反応も多かった。でも今は客が慣れてきた印象で、同じことをする店が増えたからだと思う」と話す。ユトレヒトのアイリッシュパブ「Mick O’Connells」では、チップ収入が月あたり3,500〜4,000ユーロに上り、全額をスタッフに時間給ベースで分配しているという。
賛否両論——「強制感」か「自由な選択」か
導入が進む一方で、客側の反応は割れている。ユトレヒトのサラダバーでチップを断った女性・ソフィーさんは「なんか機械的で、個人的なやり取りじゃない感じがする。ただ『払う?払わない?』って聞かれてるだけ」と感じた。一方、The Shoreで5%を支払った客は「スタッフが一生懸命働いているから、少し上乗せできるのはいいことだと思う」と肯定的だ。
経営者にも温度差がある。アムステルダムではTebi利用店舗の30%超が機能を有効にしているのに対し、ナイメーヘンでは10%にとどまる。デン・ボスのブラッスリー「Breton」のオーナーは「チップは客が自分で払いたいと思ったときに払うもの。無理に求めるつもりはない」と語り、同市のカフェ「CinQ」も「選択肢を見せることで、払わざるを得ないと感じる人もいるかもしれない」と慎重な姿勢を崩さない。
在蘭日本人にとっての実際的な影響
チップの習慣がない日本文化で育った在蘭日本人にとって、この端末画面はとりわけ戸惑いの種になりやすい。「5%」「10%」「15%」「金額を入力」「なし」という選択肢が現れても、選ばなければならないわけではなく、「なし」を選ぶことに問題はない。現地の感覚ではサービスに満足した場合に5%程度を選ぶのが一般的で、高額チップは期待されていない。導入店舗が今後も増える見通しのなか、「どう反応するか」を事前に知っておくだけで、レジ前の気まずさはずいぶん和らぐはずだ。
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情報源: NOS Algemeen


