脳腫瘍後の病的肥満児に新薬が突破口――視床下部の「空腹シグナル」を修復
国際臨床試験でBMI平均16.5%低下、EMA・FDAはすでに承認済み
脳腫瘍、あるいはその手術や治療が原因で視床下部に傷を負った子どもたちは、体が「満腹」を感じる仕組みそのものを失ってしまう。どれだけ食べても消えない空腹感、思うように動かない代謝――そうした状態が重なり、病的な肥満へと至る。従来の治療法では打つ手がほとんどなかったこの難題に、新たな光が差し込んでいる。薬剤セトメラノチドの国際臨床試験の結果が、医学誌『New England Journal of Medicine』に発表された。
「信号を送れない脳」という根本的な問題
視床下部は、体が食物を必要とするタイミングや、摂取した栄養をどう燃やすかを制御する司令塔だ。腫瘍がこの部位の近くに発生すると、手術や放射線治療の影響も含め、その機能が損なわれることがある。結果として患者は常に極度の空腹感を覚え、しかも摂取したカロリーを脂肪として蓄えやすくなる。食事制限や運動といった一般的な肥満治療は、脳の損傷そのものには届かないため、ほとんど効果がなかった。
プリンセス・マキシマセンターおよびウィルヘルミナ小児病院のハネケ・ファン・サンテン小児科教授はオランダ側の研究を主導し、この薬について「セトメラノチドは視床下部の信号機能を回復させ、ホルモンバランスと代謝を正常に近づけるようだ」と述べた。試験に参加したすべての患者が、1年以内に大幅な体重減少を経験。BMIは平均16.5%低下し、プラセボを投与されたグループが平均3.3%上昇したのとは対照的な結果となった。
家族全体を揺るがす病気の重さ
ファン・サンテン教授が強調するのは、数値だけでは測れない影響だ。「この病気がもたらす結果は計り知れない。子どもは自分ではどうにもできない空腹感を抱え、衝動のコントロールも難しくなるため、家庭は完全に機能不全に陥ってしまう」と語る。きょうだいの誕生日パーティーで食べ物が並ぶ場面さえ、視床下部に損傷を持つ子には耐えがたい試練になり得るという。臨床試験の参加者たちは、著しい体重減少だけでなく、精神面でも大きく改善したとファン・サンテン教授は報告している。
保険適用の行方が焦点に
欧州医薬品庁(EMA)と米食品医薬品局(FDA)はすでにセトメラノチドを承認しており、欧米市場での使用が認められた状態だ。しかしオランダ国内での保険適用は現時点で未定であり、ゾルフインスティテュート・ネーデルランド(オランダ医療保険評価機構)との協議がこれから始まる段階にある。ファン・サンテン教授は「臨床試験の結果はきわめて説得力があり、この患者グループへの迅速な給付実現を願っている。そうして初めて、視床下部損傷による肥満を抱えるすべての人々にセトメラノチドを届けられる」と訴えた。
オランダに暮らす日本人家庭にとっても、小児がんの治療後遺症は無縁ではない。今後の保険適用の動向は、該当する子どもを持つ家族にとって直接的な生活問題となる。協議の行方を注視したい。
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情報源: NOS Algemeen



