未認可の自己注射ペプチドによる中毒事例がオランダで急増――SNSが促す「美容注射の日常化」
TikTokやTelegramで入手した未承認ペプチドが若者を直撃
昨年12月、ヘルデルラント州の病院に20代の男性が緊急搬送された。意識が薄れ、激しいてんかん発作を起こした状態で発見された彼が使っていたのは、Telegramで購入し自分で注射した未承認ペプチドだった。担当医からNVIC(オランダ国立中毒情報センター)に相談が入り、使用をやめるよう勧告されたが、男性本人は「ペプチドが体に悪いとは思えない」と話したという。これがオランダで急増する事例の、象徴的な一例だ。
急増する中毒相談、その実態
UMCユトレヒトの一部門であるNVICが6月末に公表した2025年の年次報告によれば、同年に初めて、正式に医薬品として承認されていない「実験的ペプチド」による中毒相談が寄せられた。報告された物質はBPC-157、セランク、GHK-Cu、メラノタンの4種類。いずれもSNS上で「筋肉増強」「肌の若返り」「メンタル改善」などの効能をうたって販売されており、患者の大多数は16〜36歳の男性だった。「これらの人物がより美しく、強く、日焼けし、筋肉質になるためにペプチドを使っていたと考えるのが妥当だ」と、NVICの集中治療毒物学者ディラン・デ・ランゲ氏は述べている。
承認済み医薬品をめぐる相談も急増している。GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(商品名オゼンピック)やチルゼパチドに関する中毒相談は、2024年の76件から2025年には149件へとほぼ倍増した。さらに6件は、オゼンピックより3つのホルモン受容体に同時に作用するとされる「レトラトルチド(通称トリプルG)」に関するもの。この物質はまだ人体への使用が安全と認められておらず、市場に出回るべきではない段階にある。
「注射が当たり前になっている」
なぜ若者がこれほど簡単に未承認薬を自己注射するのか。NVICおよびUMCユトレヒトで老化生物学を研究するペーター・デ・カイゼル氏は、「人々はYouTubeでペプチドの注射方法を学んでいる」と指摘する。数カ月ごとに新たなDIY解説動画が登場し、インフルエンサーやボディビルダー、バイオハッカーたちがデ・カイゼル氏自身の研究論文を引用しながら効能を語る。氏は動画へのコメントで警告を発したいと思いながらも、「対話することで、まるで私たちが承認しているかのように映ってしまう」と苦悩を語る。
販売されているペプチドの多くは、ラベルに記載された濃度と異なるか不純物を含んでいるとデ・カイゼル氏は警告する。人体への使用に必要な純度基準で検査されているものはほぼ皆無だという。ティーンエイジャーの女性がBPC-157とGHK-Cuを含む複数のペプチドを混合注射し、吐き気・めまい・息苦しさを訴えてNVICに電話してきたケースもある。「未知の物質の混合物であるため、どの副作用がどの注射に起因するかを特定するのが困難だ」とデ・ランゲ氏は述べる。
医師への新たな問いかけ
デ・ランゲ、デ・カイゼル両氏は、医師が問診で薬物・サプリメントについて確認する際、ペプチドの使用についても明示的に質問するよう求めている。使用者によって「薬」「サプリ」「ドラッグ」のいずれと認識しているかが異なるため、医師側からの積極的な確認が不可欠だという。さらに専門家の間では、フェスティバルでの薬物検査サービスに倣い、ペプチドの純度を確認できるテスト拠点の整備も将来的な選択肢として議論され始めている。NVICへの相談件数はあくまで「氷山の一角」であり、実際の使用者数はさらに多いとみられる。オランダ国内だけでも数十のウェブショップがペプチドを販売している現状は、在蘭の人々にとっても無縁ではない問題だ。
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情報源: NRC



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