オランダ在住ウクライナ人の3分の2がうつ・不安症状――長期化する戦争が心身を蝕む
就労率は上がっても、孤立・低賃金・精神的負荷が深刻化
ロシアによるウクライナ侵攻から4年半近くが経過し、今年6月11日には戦争の継続日数が第一次世界大戦(1,568日)を超えた。終わりの見えない戦禍の中、オランダに暮らす約13万4千人のウクライナ避難民の生活実態が、WODC(オランダ科学研究・データセンター)の追跡調査で明らかになった。その内容は、楽観視を許さない現実を浮き彫りにしている。
深まる心の傷、広がる孤立
調査によると、65%のウクライナ人がうつ症状や不安障害を抱えており、2023年調査時の58%から悪化している。共同研究者のゼナブ・タミミー氏は「精神的な問題は戦争難民に多く見られ、その背景はさまざまだ」と説明する。孤独感を訴える人は44%に上り、オランダ人の15%と比べると際立って高い。大規模な収容施設での生活も影響しており、プライバシーの欠如や、施設内での薬物・アルコール乱用、暴力などが報告されている。重大なストレスを抱えていると答えた人は約3分の1にのぼり、ウクライナの戦況や現地に残る家族・友人への心配がその主な要因だ。精神的なケアを受けられているのは、男性で11%、女性で22%にすぎない。タミミー氏は「言語の壁が受診を妨げている可能性がある」と指摘する。
就労率は改善、しかし「格下げ」が常態化
一方、就労面では改善がみられる。就労率は2023年の61%から67%へと上昇した。ただし、その中身には大きな問題が潜む。回答者の62%がウクライナ出国前より低い職業水準の仕事に就いており、身体的に負荷の高い業務や長時間労働を強いられているケースが多い。42%がオランダで最低水準の職種に従事しているが、ウクライナ在住時にそうした職に就いていたのはわずか2%だった。研究者のミーケ・マリーパード氏は「オランダ語能力の不足が、より良い職を得る妨げになっている」と指摘する。
オランダ語習得の遅れは他の難民グループと比較しても顕著だ。4年間オランダに滞在したシリア難民が自己評価で5.5点(10点満点)をつけたのに対し、同じ期間のウクライナ人の自己評価は平均3.0点にとどまる。背景には制度的な問題がある。ウクライナ人は「一時的保護指令(RTB)」の適用を受けており、2027年3月4日までオランダに滞在できる一方、正規の在留資格者に提供される市民統合コース(inburgering)の対象外とされ、語学教育はほぼ自学自習に委ねられている。マリーパード氏は「滞在の一時性を前提としたオランダの政策において、言語習得は優先事項とされてこなかった」と述べる。
「自発的帰国」への過剰な期待は禁物
帰国の見通しについても、状況は変わりつつある。2023年時点で今後2年間オランダに留まる意向を示していた人は72%だったが、今回の調査では83%に増加した。また、約半数が「ウクライナが安全になっても帰国したくない」と答えており、マリーパード氏は自発的帰国に「過度な期待をすべきではない」と警鐘を鳴らす。
オランダ人との日常的な接触がある人は4人に1人(25%)にとどまり、これは2023年と変わらない。収容施設での閉鎖的な生活環境が、地域社会との接点を遠ざけているとみられる。「大半のウクライナ人はもう4年間ここに住んでいて、さらに何年も滞在するかもしれない。そうであれば、安全で住みやすい環境を整え、言語習得の機会を保障することが不可欠だ」とマリーパード氏は強調する。
在蘭日本人にとっても、ウクライナ避難民の存在は身近な社会問題だ。職場や学校、近隣での接点を持つ機会は少なくなく、彼らが置かれた状況を理解しておくことは、より豊かなコミュニティ形成への一歩にもなりうる。
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情報源: NRC



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