ズワンメルダム出土のローマ船、50年の時を経てついに一堂に会す
欧州船舶考古学の宝、ミュージアムパーク・アルケオンで再結集
アルフェン・アーン・デン・レインから東へ約5キロ。ミュージアムパーク・アルケオンの修復工房に足を踏み入れると、足場の上に積み重なった大小の木片が目に飛び込んでくる。考古学者のトム・ハーゼンベルフが指さすのは、鉄製の金具が付いた一枚の板だ。「これがズワンメルダム4号のマスト台座です」——ほぼ2000年前、全長34メートルのローマ時代の平底荷船(アーク)の一部だった木片が、今ここに静かに横たわっている。
1971年から1974年にかけて、ズワンメルダム地区の地下から次々と発掘された6隻の船は、発見当初こそ世界的な注目を集めたものの、その後の半世紀は波乱に満ちた「放浪」の歴史をたどった。「発見以来はじめて、6隻すべてが完全に保存・洗浄を終え、安全な一定の場所に収まりました」とハーゼンベルフは安堵の表情で語る。現在、6隻のうちズワンメルダム2号(全長22.5メートル)が一般公開されており、映像と解説パネルで発掘の歴史が紹介されている。
女王と市民が救った「水中の遺産」
発掘のきっかけは1968年にさかのぼる。アムステルダム大学の考古学者たちが、ズワンメルダムにあったローマ軍の駐屯地「ニグルム・プッルム」の調査を進めていたところ、施設建設工事中に作業員が中空の木材に行き当たった。当時のオランダ考古学界は「船は中世以降のもの」という先入観が強く、水中遺跡への関心は薄かった。しかし発掘が進むにつれ、2〜3世紀のローマ軍港に沈んでいた6隻の船が姿を現し、BBCやパリ・マッチ、コリエーレ・デッラ・セーラまでもが報道に駆けつけた。
問題は資金だった。当時の文化省には緊急発掘向けの予算がなく、地下水の浸入にも悩まされた。そこで立ち上がったのが、アルフェン出身の建築家ラティーフ・ペロッティだ。テレビ番組「テレヴィジール」と連携した募金活動を呼びかけると、全国から総額25万ギルダー(現在価値で約50万ユーロ相当)が集まった。さらにユリアナ女王が発掘現場を2度訪問し、水面下で文化省に資金拠出を働きかけた。こうして土木工学の専門家、学生ボランティア、工兵部隊まで加わり、発掘は完了にこぎつけた。
「ズワンメルダム型」が塗り替えた欧州の船舶史
科学的な意義も大きかった。特に3隻の平底荷船は、河川を使った物資輸送に特化した構造を持つことが明らかになり、イギリスの考古学者ピーター・マーズデンが「ズワンメルダム・シップタイプ」と命名した。現在までに欧州全土で同型船が約20隻発掘されており、オランダのワウデルデンでも同型船が確認されている。当時の発掘リーダーで現在86歳のマールテン・デ・ウェルドは、今もアルケオンに足を運び、修復と研究に携わっているという。
保存処理をめぐっては近年も困難が続いた。大型木材を扱える国内唯一の保存施設が予算削減で閉鎖されたため、スネーク近郊の工業地帯に特設設備を設けてPEG(ポリエチレングリコール)による含浸処理を実施。木材の細胞にろう状の物質を染み込ませることで、乾燥による崩壊を防ぐ手法だ。現在も修復・復元作業は続いており、船舶考古学者ヤルデニ・フォルストが博士論文の執筆と並行して研究を進めている。
在蘭日本人にとっても、このプロジェクトはオランダの文化財保護のあり方を知る格好の機会だ。アルケオンはアムステルダムから車で約40分、ライデンからも近い。ローマ時代の河川交通をリアルに伝える船の実物を、今ようやく同じ屋根の下で見ることができる。
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情報源: NRC



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