「アイスマン」ウィム・ホフの神話を解剖した批評的伝記、ブリュッセ賞に輝く
調査報道が暴くウェルネスグルの光と影
冷水浴や独自の呼吸法で世界中にファンを持つオランダ人ウェルネスグル、ウィム・ホフ。「アイスマン」の異名を持つ彼の成功神話に、正面から切り込んだ一冊がオランダのジャーナリズム界で最高の評価を受けた。フォルクスクラント紙のロベルト・ファン・デ・フリーントとアネケ・ストッフェレンが共著した批評的伝記『De IJsprofeet(氷の預言者)』が、今年のブリュッセ賞――最優秀オランダ語ジャーナリズム本賞――を受賞したと、NPOラジオ1の番組「NOS Met het Oog op Morgen」が発表した。
称賛の陰に潜む疑惑
ホフは極寒の環境に長時間耐える訓練法と呼吸エクササイズを世界に広め、複数の極寒耐久記録を打ち立てた人物だ。しかし著者たちは、こうした成功物語には別の顔があると指摘する。ホフが掲げる健康効果に関する一部の主張は事実と異なるとされ、さらに深刻なのは安全性をめぐる問題だ。ホフのメソッドに関連して20件以上の溺死事故が発生したと、遺族たちは訴えている。書籍はこうした事故の経緯を丁寧に検証し、ウェルネスブームの光と影を浮かび上がらせる。
加えて本書は、ホフの私生活における矛盾点にも踏み込んでいる。元交際相手とその子供たちに対する長年にわたる身体的・精神的暴力の疑惑だ。取材に際してホフ本人は協力を拒否しており、著者たちは関係者への徹底した聞き取りと資料調査によってその実像に迫った。
「カリカチュアに貶めず」と審査員が称賛
ブリュッセ賞の審査員は、『De IJsprofeet』を「ウィム・ホフをめぐる神話を解剖した、批判的かつ読み応えのある一冊であり、深みのある堅実な調査報道だ」と評した。その上で「主人公をカリカチュアに貶めることなく」描いている点を特に高く評価している。受賞者には賞金1万ユーロが贈られた。
ブリュッセ賞は、特別ジャーナリズム・プロジェクト基金(Fonds Bijzondere Journalistieke Projecten)が主催する権威ある賞で、昨年は調査報道記者オリビエ・ファン・ベーメンが『Ondernemers in het wild』で受賞している。
オランダ在住者にとっての意味
ウィム・ホフのメソッドは日本でも健康志向の人々の間で広く知られており、オランダ在住の日本人の中にもその実践者がいるかもしれない。今回の受賞は単なる文学的な評価にとどまらず、ウェルネス産業における科学的根拠の重要性と、インフルエンサー的存在への批判的な目線をあらためて問い直すきっかけとなっている。手軽な健康法として広まる一方で、リスクの周知が不十分なまま普及することへの警鐘として、この調査報道の意義は大きい。
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情報源: NOS Algemeen



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