子どもの無料観劇が全国に拡大、商業プロデューサーはボイコットで対抗
教育格差の解消か、市場の歪みか——劇場と業界団体が対立
来シーズン、オランダ国内で少なくとも30カ所の劇場が18歳以下の子どもを無料で迎え入れる。エンスヘーデのウィルミンクシアターやヘルモンドのヘット・スペールハウスなど、新たな参加施設が続々と名乗りを上げており、成人の付き添い者は通常料金を支払う形が基本だ。子どもを劇場へ——その理念は急速に全国へと広がっている。
ヴェンローの成功が火をつけた
この動きの火付け役となったのが、リンブルフ州ヴェンローにあるマースポールト劇場だ。コロナ禍を経て若い観客が激減し、2022年時点で子どもの観劇率はコロナ前の59%からわずか15%にまで落ち込んでいた。事態を重く見た劇場ディレクターのレオン・トマッセン氏は、財団や企業スポンサー、一般寄付者からなる「ユース基金」を短期間で立ち上げ、子ども向け公演の無料化を実現した。「アプローチした関係者はみな即座に賛同してくれた」と同氏は振り返る。
結果は劇的だった。コロナ前の比較可能なシーズンに5,000人だった子ども向け公演の来場者数は、2024〜25年シーズンには23,000人超へと跳ね上がり、客席稼働率も46%から84%に改善した。この成功を受けて、ヘンヘロのスハウウビュルフなど複数の劇場が「リンブルフ方式」を採用。同劇場では家族向け公演の来場者数が初年度に倍増し、さらに「友の会」への登録者や寄付者が増えるという副次的な効果も生まれている。
商業プロデューサーが「市場の歪み」と反発
しかしこの動きに対し、商業演劇プロデューサーの業界団体「VVTP(自由演劇プロデューサー協会)」が強く反発している。無料劇場に観客が流れることで、有料チケットを維持する近隣の劇場は子ども向け公演を組みにくくなり、補助金なしで運営する巡回公演の採算が悪化するという論理だ。VVTPのディアン・ホールスハー代表は「劇場間に不公正な競争が生まれている」と述べ、今週ユトレヒトで開かれた劇場・コンサートホール経営者の総会でボイコットの可能性に言及した。
VVTPの影響力は小さくない。アルベルト・フェルリンデ・シアターやメディアレーン、ファン・ホールネ・スタジオスなど同団体加盟のプロデューサーは、**オランダの専門舞台公演の約85%**を供給しているとされる。ボイコットが現実となれば、無料化を進める劇場は主要な演目を失いかねない深刻な事態になる。
「機会格差の解消」か「持続不能な実験」か
劇場側はこの警告を「寝耳に水」として受け止めつつも、無料化の理念自体は揺るがない姿勢を見せている。トマッセン氏は「ヴェンローではむしろプロデューサーへの支払いが急増した」と反論し、無料化が必ずしも収益悪化につながるわけではないと強調する。「この取り組みが潰されて、子どもたちがまた劇場の外に取り残されることにならないよう願っている。機会の平等はどの市町村でも重大な課題であり、同じ舞台を一緒に観るという体験は、それを実現する最高の手段のひとつだ」。
在蘭日本人の家庭にとっても、子どもを連れて本格的な舞台芸術に触れられる機会の拡大は歓迎すべき変化だ。一方で、業界全体の持続可能性を巡る議論は現在進行中であり、来シーズンの演目ラインアップや劇場の方針に今後も変動が生じる可能性がある。劇場側とVVTPが全国統一の枠組みを打ち出せるかどうかが、この取り組みの行方を左右する。
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情報源: NOS Algemeen



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