「高め進路推薦」がVMBOに混乱——善意の政策が生む教育現場の矛盾
「高め進路推薦」がVMBOに混乱——善意の政策が生む教育現場の矛盾
小学6年生への「前向き助言」が、中低位校に想定外の負担をもたらしている
オランダでは、小学校最終学年にあたるグループ8(日本の小学6年生相当)の進路指導において、「前向き進路助言(kansrijk adviseren)」と呼ばれる方針が広く採用されている。進路に迷いがある場合、担任教師はより高いレベルの中学校への進学を推薦するというもので、すべての子どもに教育の機会を広げることを狙いとしている。しかしこの善意の政策が、VMBO(職業準備中等教育)や実践系教育校(praktijkonderwijs)の現場では、想定外の混乱を引き起こしているという。
「チャンス」が「負担」に変わる現場の実態
VMBOや実践教育校は、NU.nlの取材に対し、実力に見合わない学校に進学した生徒が授業についていけないケースが頻繁に起きていると訴えた。「チャンスではなく、問題を生む結果になっている」というのが現場の率直な見解だ。高め推薦で進学してきた生徒が途中で行き詰まり、留年や転校を余儀なくされることも少なくない。本来その生徒に合った学校・レベルで伸び伸びと学べたはずの機会が、政策の副作用によって奪われているという皮肉な実態が浮かぶ。
学習面の遅れだけが問題ではない。自分より「一段上」の環境に放り込まれた生徒が、クラスの進度に追いつけないまま自信を失っていくという精神的なダメージも指摘されている。教師側も習熟度の大きく異なる生徒を同時に指導しなければならず、クラス全体の授業運営に支障が出ているとの声も上がっている。
政策の背景と構造的な問題
「前向き進路助言」が導入された背景には、オランダの教育格差問題がある。親の学歴や社会経済的な背景によって子どもの進路が左右される傾向が長年指摘されており、「迷ったら上へ」という原則はその是正策として設けられた。低所得世帯や移民背景を持つ家庭の子どもが、能力があるにもかかわらず低く評価されてきたという歴史的な問題意識が根底にある。
だが、平等な機会を保障するという理念と、各生徒の習熟度に合った教育を提供するという現場の責任は、必ずしも一致しない。VMBOや実践教育校は教育システムの「下位」に位置づけられがちだが、実際には職業教育や社会生活への準備として独自の意義を持つ。「より高い学校への進学」が無条件に「より良い選択」とはいえない、という根本的な問いがここに浮かび上がる。
在蘭日本人家庭への示唆
子どもの教育進路を検討している在蘭日本人家庭にとっても、この議論は無関係ではない。グループ8の進路推薦は担任教師との面談を通じて決まるが、保護者が「高め推薦」を当然視して受け入れるだけでなく、わが子の学習スタイルや精神的な準備状況を踏まえて主体的に判断することが重要だ。政策の善意を理解しつつも、現場からは見直しを求める声が出ていることを念頭に置き、進路選択に臨みたい。
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情報源: NU.nl



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