強制売春から逃れた女性、初めて語る壮絶な過去
「彼は怪物だった」——マクシマ王妃と並ぶ写真の裏に刻まれた傷
アーネムのアパートの居間に、一枚の写真が飾られている。写っているのは、マクシマ王妃と並んで屈託なく微笑む女性——エディット=ベルナデット・プートさん(42)だ。その表情だけを見れば、誰もが「成功した女性」と思うだろう。だが、その笑顔の奥には、長年誰にも打ち明けられなかった壮絶な記憶が刻まれていた。
語られなかった過去
エディット=ベルナデットさんが強制売春の被害を受けたのは、まだ若かったころのことだ。当時の加害者について彼女は「彼は怪物だった」と振り返る。その一言に、当時の恐怖と痛みが凝縮されている。性的搾取の被害者が声を上げることは、今日のオランダ社会においてもなお容易ではない。スティグマへの恐れ、加害者への恐怖、そして「信じてもらえないかもしれない」という不安——こうした壁が、多くの被害者を沈黙に追いやってきた。エディット=ベルナデットさんもまた、長い年月をかけてようやくこの重い口を開いた。
笑顔が象徴するもの
マクシマ王妃との写真は、彼女が今日社会復帰を果たし、表舞台で活動していることを示す。被害から立ち直るプロセスは決して一直線ではなく、並外れた精神的強さを要するものだ。今回、オランダの全国紙ADの取材に対して全貌を語ることを決めた背景には、同じ境遇にある人々への思いがある。自分の経験を社会に伝えることで、次の誰かが救われるかもしれない——そうした使命感が、沈黙を破る力となった。
オランダ社会と性的搾取の現実
オランダは性産業の一部が合法化されている国として知られるが、その陰で強制売春や人身売買の被害は後を絶たない。強制売春の被害者の多くは、被害を届け出ることなく沈黙したままだとされており、支援団体はその実態把握の難しさを長年指摘している。エディット=ベルナデットさんの証言は、制度の隙間に落ちてきた被害者の存在をあらためて可視化するものでもある。在蘭の日本人コミュニティにとっても、こうした問題は決して対岸の火事ではない。地域社会の中で何かおかしいと感じたとき、相談窓口や支援機関の存在を知っておくことが、誰かの命綱になり得る。
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