オランダのTBS制度が深刻な機能不全――待機者は5年で6倍近くに膨れ上がる
新規受け入れは前年比28%減、治療期間も長期化が加速
オランダの司法精神医療(TBS)制度が昨年さらに深刻な機能不全に陥っていることが、11の法精神医療センター・クリニックが参加する業界団体「TBSオランダ」の最新データで明らかになった。患者の受け入れ・治療・退院という三つの流れがいずれも滞り、制度全体がほぼ機能停止に近い状態になっている。
待機者数が5年で6倍近くに急増
TBSオランダによると、2025年にTBSクリニックへの入所を待っている人数は261人に達した。2020年時点では45人だったことと比べると、わずか5年で約6倍近くにまで膨れ上がった計算になる。待機者のほとんどは刑務所内で治療の順番を待っており、待機期間が4か月を超えた場合、国が損害賠償を支払う義務が生じる。この補償コストは年間数十万ユーロにのぼるとされ、財政的な負担も無視できない水準となっている。
受け入れ側のキャパシティ不足も深刻だ。2025年にTBSクリニックが受け入れた新規患者は118人で、前年比28%減にとどまった。オランダ政府はクリニック「デ・カイフェランデン」や「デ・オーストファールデルスクリニーク」の病床数を増やし、「フェルトジフト」でも拡充を進めているが、増大する需要には到底追いつかない状況だという。
治療期間の長期化と「出口不足」が悪循環を生む
受け入れだけでなく、クリニック内での治療期間が長期化していることも問題を複雑にしている。現在、TBS患者の平均治療期間は約10年で、前年より約1年半延びた。TBSオランダ議長でもあるデ・ロイセ・ウィッセルのディレクター、ヒアシント・ファン・ブッセル氏は、「通過基準を高く設定しすぎていないか、自問する必要がある。保証は決して与えられないが、今は必要以上にリスクを避けている可能性もある」と語り、運用面での見直しの余地を示唆した。
さらに、治療を終えた患者を受け入れる「出口」側の施設も慢性的に不足している。高警備クリニックを出た後も、多くのTBS経験者はグループホームや介護付き住宅など何らかの支援付き住居を必要とする。しかし、低警備レベルの施設や対応できる住宅が足りないため、患者が高警備クリニックに必要以上に長く留まることになり、新たな患者の受け入れ枠を圧迫するという悪循環が生じている。
地域社会の抵抗感が新施設の開設を阻む
こうした状況を打開するため、TBSクリニック側は自ら退院後の住居確保に乗り出したり、一般の介護施設に協力を求めたりしている。しかし、ファン・ブッセル氏によれば、多くの自治体は法精神医療関連の施設開設に消極的だという。「社会全体の寛容度が以前より低くなっている。難民申請者センターの設置をめぐる議論と似た構図で、すでに住宅難や他の問題を抱えているとして拒む自治体が多い」と同氏は指摘する。
ただし、ファン・ブッセル氏はその懸念を「根拠がない」とも述べている。「実際に法精神医療施設の受け入れ経験を持つ自治体は、概して寛容だ。治療を終えたTBS経験者を受け入れて後悔した自治体を、私は一つも知らない」。在蘭日本人にとって直接的な関わりは薄いテーマかもしれないが、医療・福祉・住宅政策が複雑に絡み合うこの問題は、オランダ社会の構造的課題を映し出す一断面でもある。
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情報源: NOS Algemeen



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