オランダの近隣トラブル、複雑化が止まらない――「単純な争いはもはや稀」
精神的な問題や言語の壁が調停現場に重くのしかかる
音楽の音がうるさい、早朝に廊下で大声を上げている——そんなささいな出来事をきっかけに始まる近隣トラブルが、オランダ全土で深刻さを増している。近隣紛争の調停組織が共同でNOSに報告したところによれば、2025年に全国の近隣調停機関へ寄せられた相談件数は2万件を超えた。そのうち犯罪予防・安全センター(CCV)が「複雑案件」と分類したケースは全体の30%にのぼり、5年前の21%から着実に増加している。
「単純な争いはもはやない」――調停の現場から
10年のキャリアを持つ調停員のポール・デ・ライター氏は、「苦情の大半は騒音問題だ。音楽だったり、子どもがビー玉を転がす音だったり。断熱性能が低い集合住宅では、それだけでたちまち問題になる」と語る。通常、調停は2人1組の担当者がまず申告者宅、次に相手方宅を個別に訪問し、双方が合意すれば同席での対話へと進む。北ホラント州で活動するベテラン調停員のハネ・フルーネンダイク氏は、「私たちが訪問しただけで、当事者が『外部の人間に頼らないと話し合いもできないのか』と気づき、自力で解決に至ることもある。それが一番うれしい」と話す。
複雑化の主な要因として関係者が口をそろえるのが、精神的な問題を抱えた住民の増加だ。北ホラント州の調停組織「ベタービューレン」のディレクター、クローディア・ヘルスロート氏は、「もはや普通の近隣トラブルはほとんどない。混乱した行動を示す人、複合的な問題を抱えた人——そういう案件ばかりだ」と明言する。精神科の支援を待つ長期待機者が当事者になるケースも珍しくなく、「私たちには人を変えることはできないが、より暮らしやすくなる取り決めを作る手助けはできる」とヘルスロート氏は続ける。フルーネンダイク氏が現場で徹底しているモットーは「判断を手放し、傾聴に徹する」だ。
言語の壁と専門訓練の強化
言語の違いが障壁となるケースも増えている。フルーネンダイク氏が昨年関わった事例では、オランダ人家族とオランダに来て間もないシリア人家族の間で、午後7時ごろの子どもの就寝時間帯における騒音が問題となった。「通訳を手配して、まず別々に訪問し、その後テーブルを囲んでもらった。通訳を介して互いの状況を伝え合うことで、シリア人の父親も本当は良好な関係を望んでいることが分かった」。現在この2家族はグーグル翻訳を使って直接コミュニケーションを取れるまでになったという。
こうした現場の複雑化に対応するため、ベタービューレンでは新たなパイロットプログラムを立ち上げた。すでに集中的な基礎訓練を受けているボランティア調停員のうち、30人が複雑案件に特化した追加専門訓練を受講している。「基礎訓練だけでは対応しきれない場面が増えており、引き出しをもっと増やす必要がある」とヘルスロート氏は説明する。
在蘭日本人にとっても、集合住宅での騒音や生活習慣の違いをめぐるトラブルは身近なリスクだ。近隣との問題が生じた際には、居住する自治体の近隣調停機関(buurtbemiddeling)に相談することで、無料で中立的な調停サービスを受けられる。言語サポートの提供実績もあり、早期の相談が問題の深刻化を防ぐ近道になる。
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情報源: NOS Algemeen



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