歯磨き粉選びのポイントはフッ素配合の有無――専門家が語る科学的根拠
ブランドよりも成分。WHOが「必須医薬品」に指定する理由とは
スーパーや薬局には数十種類もの歯磨き粉が並び、オンラインショップのクルイドファットでは136種類が販売されているという。ホワイトニング、歯周ケア、知覚過敏対応――パッケージに踊る謳い文句は多彩だが、「結局どれを選べばいいのか」と頭を抱えた経験を持つ人は少なくないだろう。アムステルダム歯科学術センター(ACTA)で予防歯科学を専門とするダグマル・エルセ・スロット教授の答えはシンプルだ。「フッ素(フルオリド)が含まれているかどうか、それだけが本当に重要な基準です」。
フッ素がエナメル質を守る仕組み
歯のエナメル質は主にヒドロキシアパタイトという硬い鉱物で構成されている。口内の細菌が糖分を分解すると酸が発生し、このミネラルを少しずつ溶かしていく。フッ素イオンはヒドロキシアパタイトの構造に取り込まれ、より酸に強いフルオロアパタイトへと変化させる。つまり、フッ素はエナメル質そのものを「アップグレード」することで虫歯の進行を抑えるのだ。スロット教授は「通常の使用方法であれば安全性にも問題はない」と強調する。世界保健機関(WHO)もフッ素を必須医薬品リストに指定しており、その有効性は国際的な医学的コンセンサスとなっている。
フッ素自体は自然界に存在する物質であり、特定の岩石地帯では飲料水に自然に含まれている。アメリカでは20世紀初頭に歯科医のフレデリック・マッケイが水道水のフッ素濃度と虫歯の発生率の関係を報告し、その後の研究につながった。最初のフッ素入り歯磨き粉が登場したのは1907年のことだ。
オランダ独自の歴史的背景
日本人にとって興味深いのは、オランダにおける水道水フッ素添加をめぐる経緯だ。1950年代に実施されたティール・キュレンボルフ研究では、フッ素を添加したティール市と添加しなかったキュレンボルフ市を比較し、添加した地域で虫歯が大幅に少ないことが実証された。しかし最高裁判所の判断と「個人の選択の自由」を重視する政治的判断により、水道水へのフッ素添加は全国的には導入されなかった。スロット教授は「最終的には政治的な決断だった」と語っている。
その結果、オランダでは歯磨き粉でのフッ素摂取が個人の判断に委ねられる形となった。皮肉なことに、現在フッ素を含まない歯磨き粉を探すほうが難しく、主に自然食品店などで販売されているという。「フッ素を不自然な添加物と見る人もいるが、自然界に存在する物質」とスロット教授は指摘する。
歯の健康を守るために日々できること
「フッ素さえ入っていれば何でもいい」とはいえ、歯の悩みを抱えている場合は目的に応じた製品を選ぶ余地もある。知覚過敏、歯肉炎、口臭、着色などに対応した成分を含む製品は「本当に効果がある」とスロット教授も認めている。
一方で、どんな良い歯磨き粉を使っても、生活習慣の見直しなしには限界がある。教授が推奨するのは1日2回の丁寧なブラッシングと歯間ケア、そして「1日の食事・間食の回数を7回以内に抑えること」だ。現代人の食生活における糖分の多さと「ちょこちょこ食べ」の習慣こそが、歯を脆くする主因だという。「歯の状態は人それぞれ異なる。歯科医や歯科衛生士に個別の指導を求めることも大切」と教授は締めくくる。在蘭の方も、日本語対応のクリニックや普通のオランダの歯科医を上手に活用しながら、まず手元の歯磨き粉のパッケージで「fluoride」の文字を確認してみてはいかがだろうか。
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情報源: NRC



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