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レンブラントは本物か――再現可能な鑑定を目指す研究者の挑戦
社会 読了 3分

レンブラントは本物か――再現可能な鑑定を目指す研究者の挑戦

アムステルダム自由大学の博士論文が問う、美術帰属研究の透明性

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「その絵画は本当にレンブラントの手によるものなのか」――美術館の展示室に並ぶ巨匠の作品には、長い年月をかけた研究と論争の歴史が刻まれている。こうした帰属(トーシュレイフィング)の問題に、新たな科学的視座から取り組んだ研究がオランダで注目を集めている。アムステルダム自由大学(VU)のシャルロット・ルルケンス氏(35歳)が4月末に博士論文を提出・審査を通過し、美術史の世界に「再現可能な鑑定プロセス」という概念を持ち込んだ。

専門家の「個人の目」に頼ってきた世界

ルルケンス氏はアムステルダム大学で美術史を学んだ後、ハーグのマウリッツハイス美術館で学芸員として勤務した経験を持つ。同館はレンブラントの確実な真作を11点所蔵する一方で、7点については帰属に疑問が呈されており、昨年も2点が真作とは認められないと判断されたばかりだ。こうした現場経験を通じてルルケンス氏が気づいたのは、帰属研究の不透明さだった。1990年代末に行われたある調査では、ハーグとニュルンベルクにある2点のレンブラント肖像画について「どちらが真作か」という結論が逆転したが、その議論の過程や各専門家の個別の判断は十分に記録されていなかった。「何が分かっていて、何が分かっていなかったのか。そのプロセスを繰り返すことができなかった」とルルケンス氏は語る。自然科学では「再現性(レプリカビリティ)」は研究の信頼性を担保する基本原則だが、美術史ではその概念がほとんど適用されてこなかった。

「A-ECM」という新しい枠組み

こうした問題意識から生まれたのが「帰属専門家合意会議(A-ECM: Attribution Expert Consensus Meeting)」だ。この手法では、どの専門家を参加させるか、「帰属」という言葉を何と定義するか(画家本人が筆を走らせたのか、それとも工房の弟子が主に描いたが「芸術的発案」は本人によるものなのか)、そして議論の過程から最終結論に至るまで、すべてを体系的に文書化する。ルルケンス氏はこの手法を実際に適用し、マウリッツハイスとニュルンベルクのゲルマン国立博物館が所蔵する2点のレンブラント肖像画を、実際に同一会場(ニュルンベルク)に持ち寄って専門家が比較検討するという前例の少ない試みを実現した。さらにアントワープのKMSKAが所蔵するルーベンスの大型祭壇画(縦5メートル超)についても、修復作業中に足場を組んで間近から調査するという好機を活かした。

調査では、マクロXRF蛍光X線による顔料分析や年輪年代学(デンドロクロノロジー)といった自然科学的手法も活用された。ただしルルケンス氏は、こうした技術の限界についても率直だ。「19世紀以降に製造された顔料が検出されれば、17世紀の画家を候補から外せる。しかし候補を絞り込んでも、特定の一人に確定する『スモーキングガン』にはなりにくい」。解釈には常に主観が介在し、デジタル技術や科学分析が進歩した現代でも、熟練した鑑識眼(ケナーシャップ)との連携は不可欠だという。

専門家同士の議論が覆した「確信」

A-ECMの有効性を示すエピソードとして、ある専門家の変化が挙げられる。ルベンスの祭壇画について、当初「本人が全面的に描いた」と75%の確信を持っていた専門家が、グループ討議を経て50%へと見直した。「細部を比較していくうちに、全体がルーベンスの手によるという確信が揺らいだ。ただし大部分が彼の筆によるという見解は変わらない」と述べた。一見当たり前のようだが、帰属研究の現場では専門家が孤立して判断を下し、その根拠が共有されないまま定説化されることが珍しくない。「知識をより多くの専門家が共有し、互いに問い合わせる文化をつくることが重要だ」とルルケンス氏は強調する。

在蘭日本人にとって、マウリッツハイスはフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」やレンブラント作品で馴染み深い美術館だ。今後、この研究が示す透明で再現可能な鑑定プロセスが普及すれば、展示作品の由来や真贋に関する説明もより詳細で信頼性の高いものになっていく可能性がある。美術鑑賞の深みは、こうした地道な学術研究によって支えられている。

情報源: NRC

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