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ICC職員をスパイ——ハーグの国際刑事裁判所が秘密諜報作戦の標的に
社会 読了 3分

ICC職員をスパイ——ハーグの国際刑事裁判所が秘密諜報作戦の標的に

ロンドンの民間情報機関2社が少なくとも5か月間、ICC職員の個人情報を収集・工作

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ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)の職員たちが、ロンドンの民間情報機関による組織的な監視・工作活動の標的となっていた。NRCが入手した会議録音やメール、関係者12人への取材をもとにした調査報道によって、少なくとも5か月間にわたる秘密諜報作戦の全容が浮かび上がった。舞台はロンドンの高級住宅街メイフェアの会議室——そこで交わされた会話は、オランダ国内で働く法曹関係者たちの私生活を根こそぎ掘り起こす作業の記録だった。

「主要標的」は告発者の女性弁護士

作戦を主導したのは、ロンドンの民間情報機関「Highgate Advisory」と、そのパートナー企業「Elicius Intelligence」の2社だ。Highgateは約20人規模の戦略諜報会社で、元DEA(米麻薬取締局)捜査官や英国家犯罪庁(NCA)の元職員、ITスペシャリストらを擁するEliciusと連携して作戦に当たった。

「主要標的(main target)」とされたのは、ICC主任検察官カリム・カーンから性的暴行を受けたと告発した38歳の女性弁護士(本記事ではSと表記)だ。Sは2024年春に告発を行い、カーンが業務出張中や執務室内で繰り返し性的接触を迫り、最終的には暴行・強姦に至ったと主張した。カーンはこれらの申し立てを「まったく事実無根」と全面否定している。

収集された情報は広範に及んだ。パスポートの渡航履歴、メールアドレス、パスワード、宗教・出自に関するデータ、家族の個人情報——Sの義母がゼーラント州テルノイゼン近郊の出身であること、義父が幼少期に地方紙の子ども向け欄に絵を掲載した記録まで調べ上げられていた。NRCが入手した録音には、Sがマレーシアに到着してから「48時間も経たないうちに」その行程が会議の議題になっている様子が記録されていた。

告発・逮捕状・陰謀論が複雑に絡み合う

この一連の動きの背景には、国際的に注目を集めた法的・政治的な出来事がある。Sによる告発の約2週間後、カーンはイスラエルのネタニヤフ首相に対する戦争犯罪容疑での逮捕状請求という歴史的な決定を下した。米国とイスラエルはこの決定に強く反発し、Sの告発を利用してカーンおよびICCそのものの信頼性を失墜させようとした。「カーンは自らのスキャンダルから目をそらすために逮捕状を請求した」との主張が米国の政治家らから相次いで上がった。

こうした政治的文脈の中で、Sに対する根拠のない憶測が流布し始めた。「ハニートラップ」「モサドのスパイ」——これらの噂はメディアにも広がったが、NRCは裏付けとなる証拠は一切存在しないとしている。国連は2024年11月に調査を開始し、5,000ページに及ぶ報告書がまとめられた。3人の独立判事がその内容を精査したが、証拠は法的な認定には不十分と判断。カーンは2025年5月に一時的な職務停止に追い込まれた一方、依頼主の正体は「the ultimate client」という呼称で徹底的に秘匿されたままだ。

オランダに拠点を置く国際機関の脆弱性

今回の件が示すのは、ハーグに集中する国際機関の職員がオランダ国内においても組織的な諜報活動の標的になり得るという現実だ。Highgate・Elicius両社は、欺瞞工作、情報源への接触、秘密撮影など、多様な手段を駆使していた。ICCの職員として、あるいは国際機関に関わる法律家・研究者として働くオランダ在住者にとっても、この問題は対岸の火事ではない。

民間情報産業はロンドンやジュネーヴを中心に急成長を遂げており、表向きは「戦略的コンサルティング」として合法的に機能しながら、裏では名誉毀損キャンペーンや監視工作を受注しているケースが後を絶たない。依頼主の正体が依然として不明である以上、作戦の全容と真の目的は今もベールに包まれている。ICCのガバナンス機関は現在も対応を協議中で、今後の展開が注目される。

情報源: NRC

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