オランダの女性殺害、「フェミサイド」認定はわずか2%
司法省研究機関が勧告——法的定義の確立が急務
オランダの裁判所は、国際的な定義に照らせばフェミサイドに該当するケースであっても、判決文でその言葉をほとんど使わない——司法省の研究・データセンターWODCが発表した報告書が、そんな実態を明らかにした。マーストリヒト大学の刑事法研究者ローリー・リッツェン氏とスーザン・ファン・デル・アー氏が主導したこの調査は、オランダ議会の要請を受けて実施されたものだ。
判決の98%が「フェミサイド」に触れない現実
調査対象となったのは、2021年から2024年の間に審理されたフェミサイド該当の可能性がある282件の事件。このうち判決文で「フェミサイド」という用語が明示されたのは、わずか2%(約6件)にとどまった。研究者らが適用したのは国連薬物犯罪事務所(UNODC)の基準で、現・元パートナーによる殺害だけでなく、見知らぬ他者による一部のケースも含む広義の定義だ。検察庁は「現・元パートナーによる殺害はすべてフェミサイド」とする独自基準を採用しているが、裁判所には統一定義が存在しない。こうした定義の不統一が、認定率の低さに直結している。
研究者らの推計によれば、オランダでは国際定義に基づくと年平均43人の女性が命を奪われており、これは約8日に1人というペースになる。
「名付けること」が早期介入につながる
研究チームが訴えるのは、単なる言葉の問題ではない。女性殺害は孤立した事件であることは稀で、その背後には多くの場合、ストーキング、支配、過去の虐待、あるいは女性蔑視といったパターンが潜んでいる。フェミサイドと明示的に認定することで、警察や検察がこうした暴力のパターンをより早期に把握し、介入できるようになると研究者らは主張する。
審査した事件の40%では、量刑の段階で被害者と加害者の間の過去の暴力が考慮されており、そうした事件では常に刑が重くなっていた。一方、残る60%については過去の暴力が考慮されたかどうか不明のままだ。また報告書は、ジェンダーに関連する要素(過去のDVなど)を故意や計画性の立証に活用する余地は、裁判官よりも検察官のほうが大きいと指摘している。
欧州の先行事例を参考に、法的定義の確立を
報告書は、フェミサイドの明確な法的定義の確立と、事件への一貫したラベリングを勧告している。調査に協力した複数の裁判官や検察官も、フェミサイドまたはジェンダー関連要素を加重量刑の根拠とすることへの支持を表明した。ただし両者とも、現行の殺人・過失致死に対する刑罰は概ね十分と考えている。
報告書が参考例として挙げるのは、フェミサイドを刑法上の独立した犯罪として規定するキプロスとイタリア、そして専門のジェンダー暴力裁判所と統一定義を持つスペインだ。研究者のリッツェン氏は「ジェンダー中立的な表現では、ジェンダーに基づく暴力という固有の文脈が失われてしまう」と警鐘を鳴らしつつ、法的定義の策定は最終的に政治家が判断すべき問題だとも述べている。
オランダ国内では昨夏のロッテルダムでの1,000人規模の抗議デモ、欧州評議会による昨年10月の批判的報告書、そして前内閣の「フェミサイドをなくせ!」計画と、問題は政治的議題として定着しつつある。在蘭日本人にとっても、パートナー間暴力の早期発見や相談窓口へのアクセスを知っておくことは、決して無関係な話ではない。
広告掲載にご興味のある方は こちら
情報源: DutchNews



/https://content.production.cdn.art19.com/images/c8/0d/d3/2a/c80dd32a-cdd0-4ac0-926c-6cf20d3f5a14/92419bbca54f79b205275f8406c01019e3992c550445433b216528be175d641cb71d24185c0a7433adae777e927c30531d58cb1af6f0ac1d444ab517564dba48.jpeg)
