毎月襲うホルモンの波――月経周期による精神症状、研究不足の実態
数万人が抱える不調、なぜ医療は長年向き合ってこなかったのか
毎月、決まった時期になると気分が沈み、日常生活が送れなくなる。そんな経験を抱える女性が、オランダだけでも数万人規模に上ると言われている。月経周期に連動したうつ症状や精神的不調は、決して珍しいことではない。しかし医療の世界では、この問題は長らく十分に取り上げられてこなかった。
「気のせい」で片づけられてきた女性の不調
NRCのポッドキャストでオーディオ編集者のヤラ・ファン・ホイフテンが掘り下げたのは、こうした女性特有の訴えが、なぜ何十年もの間、医療・研究の世界で軽視され続けてきたのかという問いだ。月経前症候群(PMS)や、より重篤な月経前不快気分障害(PMDD)は、ホルモンの変動が脳内の神経伝達物質に影響を与えることで引き起こされるとされている。それにもかかわらず、この分野への研究投資は他の精神疾患と比べて著しく少ないのが実情だ。
歴史的に見ても、医学研究の被験者は長らく男性が中心だった。女性の体はホルモン周期による「変数」が多いとして、臨床試験から除外されることすら珍しくなかった。その結果、女性特有の症状に関するエビデンスは蓄積されにくく、医療現場での理解も進まないという悪循環が生まれた。「感情的になりやすい」「ストレスのせいだ」と片づけられた経験を持つ当事者の声は、ポッドキャストの中でもリアルに語られている。
生活を「毎月リセット」される当事者たち
症状が重い場合、毎月一定期間、仕事や人間関係に支障をきたすほどの落ち込みや不安、怒りが押し寄せる。PMDDと診断された女性の中には、周期の後半になると「別人のようになる」と表現する人もいる。パートナーや家族との関係が繰り返し傷つき、職場でのパフォーマンスが月によって大きく変動するケースも報告されている。
治療の選択肢としては、抗うつ薬(SSRI)やホルモン療法などが用いられることもあるが、すべての人に効果があるわけではなく、副作用への懸念から治療を断念する女性も多い。そもそも、適切な診断にたどり着くまでに何年もかかることがあるという点も、深刻な課題として指摘されている。
オランダ在住の女性にとっての意味
オランダの医療制度では、まずかかりつけ医( huisarts)に相談することが基本となる。しかし、月経周期と精神症状の関連について十分な知識を持つ医師がどれだけいるかは、個人差が大きい。自分や周囲にこうした症状がある場合、「ホルモンとの関連」を明示して相談することが、適切なケアへの第一歩となりうる。NRCのポッドキャストが改めてこの問題を社会的議題として提起したことで、医療現場や政策立案者への認識向上につながることが期待されている。長年「個人の問題」として抱え込まれてきた不調を、社会全体で向き合う課題として捉え直す動きは、ようやく始まったばかりだ。
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情報源: NRC



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