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野良猫が絶滅危惧の水鳥「グルット」を脅かす——4年間の追跡調査が示す衝撃の実態
社会 読了 3分

野良猫が絶滅危惧の水鳥「グルット」を脅かす——4年間の追跡調査が示す衝撃の実態

直接の捕食だけでなく「ストレス要因」としての影響も判明、研究者が警鐘

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フリースラント州の小さな農家の北、ネスという村の近くに広がる牧草地保護区「ソアーレモアーレ」。黄と紫の野花が茂り、ノウサギが野を駆け抜けるこの湿地に、ウィルドカメラの黒い細杭が点々と立ち並ぶ。それぞれが、草の間に隠された巣を監視している。フローニンゲン大学の生態学者エスター・スワンクホイゼンが4年間にわたって積み重ねてきた研究の現場だ。

130羽のヒナ、生還はわずか15羽

スワンクホイゼンが調査対象としたのは、オランダの牧草地に繁殖するタイリクオグロシギ、通称「グルット」だ。国際的な絶滅危惧種であり、西ヨーロッパのグルット繁殖個体数の80%以上がオランダに集中するという重要な種である。フリースラント州とフローニンゲン州の2カ所の保護区で、研究チームはヒナ約130羽に小型の無線発信機を取り付けて追跡調査を実施。しかし保護区を生きて離れたのはわずか15羽にとどまり、研究者は「この数では種の維持に十分ではない」と述べている。

死体が回収できた13羽について、咬傷に残ったDNAから捕食者を特定したところ、4羽は猫によって殺されていたことが判明した。残りはキツネや石テンなど他の捕食動物によるものだった。さらにフリースラント州外の南ホランド州での別調査でも同様の結果が得られており、猫がグルットの「食物連鎖の一角を確実に担っている」とスワンクホイゼンは結論づける。

捕食だけでない——「歩くストレス要因」としての猫

研究が浮き彫りにしたのは、直接の捕食にとどまらない影響だ。猫が巣の近くを通るだけで、親鳥は警戒行動を取り、鳴きながら空中を旋回して侵入者を追い払おうとする。この間、卵は抱かれないまま放置され、冷えすぎれば孵化の失敗につながる。孵化後のヒナも警戒音を聞くと草むらに伏せて隠れるが、その間は採食ができず成長が遅れる。スワンクホイゼンはフローニンゲン近郊の保護区での調査データを示しながら、「猫による撹乱はほぼ24時間、保護区内のあらゆる場所で継続的に発生していた」と指摘する。「たとえ動物を直接殺さなくても、猫は水鳥の個体群に負の影響を与えている」というのが彼女の結論だ。

猫の食性分析も注目に値する。オランダ全土の草地や砂丘地帯で165点の糞サンプルを収集し、DNAを解析したところ、放し飼い猫の食事の約4分の3は野外で捕獲した獲物で占められており、市販の猫用フードは全体の4分の1に過ぎなかった。獲物の大半はノネズミ類だったが、約10%は鳥類で、そのなかにはレッドリスト掲載種のタヒバリやハシビロガモも含まれていた。

在オランダ日本人にとっての意味

オランダ政府はすでにキツネや石テンを管理対象として、保護区への侵入を制限してきた。牧草地での刈り取り時期の規制や放牧開始時期の調整も実施している。しかしスワンクホイゼンは、「そうした取り組みがある一方で、猫については依然ほとんど対策が講じられていない」と訴える。推計によれば、オランダには約135万〜120万頭の野良猫に加え、屋外に出ることの多い飼い猫が約300万頭いる。

ペットとして猫を飼うオランダ在住者にとっても、この研究は他人事ではない。保護区周辺に住んでいる場合、愛猫が知らないうちに数キロ先の湿地まで行動範囲を広げている可能性がある、と研究者は警告している。スワンクホイゼンは今後の政策提言として、少なくとも繁殖期には保護区周辺での猫の屋外放し飼いに何らかの制限を設けることを求めており、この調査結果が今後のオランダの自然保護政策に影響を与えるか注目される。

情報源: NRC

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