欧州政治共同体がアルメニアで首脳会合――「痛ましい教訓」、自立への問いを前に
40か国超が集結、トランプ米軍撤退表明の余波のなかで
40か国以上の欧州首脳が5月初旬、アルメニアの首都エレバンに集結した。舞台は第8回欧州政治共同体(EPG)首脳会合。欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表のカヤ・カラスが「驚いた」と漏らしたのは、開幕直前に飛び込んだトランプ米大統領の発表――メルツ独首相の発言に反発するかたちで、ドイツ駐留米軍5,000人以上の撤退を表明したのだ。緊張した空気のなか、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は冒頭でこう述べた。「最近学んだことがあるとすれば、私たちがいかに多くのことで依存しすぎていたかということだ。これは痛ましい教訓だ」。
「非公式の場」が果たす役割
EPGは2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、フランスのマクロン大統領が提唱した非公式の対話の枠組みだ。NATOやEUとは別に、欧州の安全保障を幅広く議論する場として生まれた。当初は懐疑的な見方も多かったが、今回で8回目を数え、参加国もEU加盟国にとどまらず英国、トルコ、ウクライナなどを含む広域な構成となっている。「EUに加盟していない国にとってこそ重要な場だ」とモンテネグロのミラトヴィッチ大統領は語る。今回はさらに一歩進み、非欧州国として初めてカナダのカーニー首相が参加した。「私たちは非欧州国のなかで最も欧州的な国だ」とカーニー首相は開幕全体会合で表現し、安全保障と経済の両面で欧州との連携強化を訴えた。カナダもまた「予測不能なアメリカ」との関係に悩む立場として、欧州各国から同志として受け止められている。NATO事務総長を務めるマルク・ルッテもエレバンに姿を見せた。ただし、EPGは非公式の協議の場であるため、文書による合意や具体的な行動計画は示されなかった。
アルメニア開催が持つ地政学的意味
今回の開催地がアルメニアであることには、象徴的な意義がある。数年前まで、アルメニアにとってロシアは最大の同盟国だった。しかしアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフに軍事侵攻した際、ロシアが実質的な支援を行わなかったことで、アルメニアはモスクワへの信頼を失い、欧州寄りの外交に舵を切り始めた。その転換を体現するように、長年の敵対関係にあるアゼルバイジャンのアリエフ大統領は今回、ビデオ接続で会合に参加。アルメニアとアゼルバイジャンは昨年、米国の仲介のもとで平和協定の骨格に合意しており、正式署名を待つ段階にある。また、メルツ独首相はトランプ発言への対応を理由に「別の公務」として欠席。オランダからは、国内の戦没者追悼式典のためイェッテン外相が参加を見送り、代理派遣も認められなかった。
在欧日本人にとっての含意
今回の会合が突きつけたのは、欧州が安全保障とエネルギーの両面でアメリカへの依存から抜け出せていないという現実だ。トランプ政権の「取引主義」的な外交姿勢が続くなか、欧州諸国は防衛費の積み増しや域内エネルギー網の整備を急ピッチで進めている。在蘭日本人にとっても、この地政学的変化は無縁ではない。オランダはNATO加盟国として米軍との協力関係を維持しつつ、EU枠組み内での防衛協力にも積極的だ。エネルギー価格や安全保障環境の変化は、生活コストやビジネス環境にも波及しうる。欧州が「自立」の意志を示した今回の会合は、その先行きを占う一つの指標となりそうだ。
情報源: NOS Algemeen


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