保険監督当局DNBに損害賠償請求へ――Conservatrix破綻問題、約1万人が声を上げる
アムステルダム地裁が「訴訟詐欺」を認定、残存損害は総計5500万ユーロ
生命保険会社Conservatrixをめぐる法廷闘争が、新たな局面を迎えた。損害を受けた約1万人の保険契約者を代表するStichting Polishouders Conservatrix(コンセルヴァトリクス保険契約者財団)は2025年4月29日、監督機関であるオランダ中央銀行(DNB)に対して正式に損害賠償責任を申し立てた。交渉が不調に終わった場合には提訴に踏み切る構えで、この問題はさらに長期化する様相を呈している。
破綻の経緯と「1ユーロ売却」の闇
Conservatrixは高い支払い保証を設けた生命保険を販売していたが、収益がそれを支えられず、2014年には新規販売を停止。2017年、DNBは同社に強制的な経営権移転を命じ、米国のEli Globalが1ユーロという象徴的な価格で買収した。しかし2020年、米国側が約束していた資本注入を履行しなかったことが明らかになり、Conservatrixは破綻。管財人が残った保険証券をWaard Verzekeringenへ売却した2023年の時点で、約4万人の契約者のうちほとんどが保険価値の90%を受け取ることができた。
問題は残り10%と付帯損害の扱いだ。財団が試算する残存損害額は全契約者合計で約5500万ユーロ。小口の葬儀保険では損害が数十ユーロ程度にとどまるケースもある一方、年金保険では1契約者あたり数万ユーロに上ることもある。
裁判所が認定した「訴訟詐欺」
今回の申し立ての直接的な根拠となったのは、2025年2月のアムステルダム地裁判決だ。裁判所はDNBが2017年の強制売却手続きの中で「processueel bedrog(訴訟詐欺)」を行ったと認定した。DNBは司法審査の場で、新たな投資家が保険会社のソルベンシー(支払い余力)を強化すると説明しながら、それが資本注入ではなくConservatrix自身が費用を負担する再保険契約によるものであるという重要な事実を伏せていた。裁判所はこの「不誠実な訴訟姿勢」によって、強制売却以外の選択肢についての「実質的な議論」が行われなかったと指摘した。
なお、この2月の判決においてDNBは売却の取り消しを命じられたわけではなく、関連文書の開示義務と損害賠償の可能性が示されるにとどまった。DNBはすでに最高裁への上告(cassatie)を申し立てており、判断の行方は依然として不透明だ。DNBの広報担当者はNRCの取材に対し、「申し立てを把握している」とした上で、「財団との協議に応じるかについては、まだ判断を下していない」と述べるにとどめた。
在蘭生活者への示唆と今後の展望
今後の焦点は、DNBが交渉テーブルに着くか否かだ。財団は「建設的な反応」を期待するとしているが、DNBが協議を拒否すれば民事訴訟へと移行する。さらに元米国オーナーのGreg Lindbergに対しても約1億5000万ユーロの賠償が命じられているが、Lindberg本人は米国で複数の詐欺事件を抱えており、「資力がない」と主張している。
この問題はオランダの金融監督体制の信頼性そのものに関わる。長期積み立て型の生命保険や年金保険を保有するオランダ在住者にとっては、監督機関が持つ責任の範囲がどこまで法的に問われうるかを示す先例として注目に値する。長引く法廷闘争は、被害者にとって金銭的な回収のみならず、制度への不信感という形でも重くのしかかり続けている。
情報源: NRC




